緒方慎一郎さん(SIMPLICITY代表/デザイナー)× 齋藤峰明さん(アトリエ・ブランマント総合ディレクター)対談 〈Vol.4〉

2016.10.15

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「本当のラグジュアリーは日本にあると思うんです」

齋藤峰明さんにお話を伺う連載の第3回目は、デザイナーの緒方慎一郎さんとの特別対談。緒方さんの経営する和食料理店「八雲茶寮」で、日本のものづくりとデザインについて語っていただきました。

世界中に広められるものをつくるには

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齋藤「最初にお会いしたのはパリでしたね」

緒方「齋藤さんには、ずっとお会いしたくて。パリにちょくちょく行っていたんで、一度、会ってお話をしたいと思っていたんです」

齋藤「僕も緒方さんにお会いしたかった。ここ(八雲茶寮)にも何度も来ていたのですけど、そのときにはお目にかかれなくて。それでパリの、確か『ダリ』という名前のレストランで、4人で食事をしたのが最初でした」

緒方「お会いしてからは、パリに行くたびに、お話を伺いに行きました。

僕は、なぜフランスのブランドが世界を席巻できるのか、それにとても興味があったんです。日本にもフランス以上に古いもの、深いものが、たくさんある。でもフランスのように世界中にそれを広められていない。だから世界中に広められるものを何かつくらないといけない。そう思って僕は仕事をずっとしてきたんです。

そうしたら齋藤さんがエルメスの成り立ちについての文章を書かれていて。それで、エルメスがどうやっていまの地位を築いたのか。フランス人にできて、日本人にできないのは、なぜなのか。そういうことを齋藤さんに、いろいろとお訊きしたんですよね」

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齋藤「それはフランス人に訊くと、意外と、上手く答えられないのかもしれない。僕は外国人だからわかるのかもしれません。というのは、フランス人は意図的に広めたわけではないんですね。

フランスというか、西洋は、昔からずっと海外に進出してきた歴史をもつ。そうして西洋のライフスタイルが世界のライフスタイルになっていった。ライフスタイルというのは価値観や美観などのすべてですから、つまり西洋の文化が世界を席巻したわけです。

そしてブランドというのは、生活に必要なものが生まれて、それでブランドになる。だから西洋の生活様式が広まって、西洋のブランドが広まったということ。対して、日本の文化は広まっていませんから、日本のブランドは国内に留まったままなのです」

緒方「そういう意味では、確かに、フランスには意図的なブランディングというのはなかったのかもしれませんね。ですが、いまだにパリは世界の憧れの街。一般庶民には近寄れない華やかな貴族的世界観があって、しかし背伸びしてエルメスを買えば、自分もそこに参加できる。そういう夢物語がありますよね」

齋藤「ロシア人や中国人は、いま、そうなってますね」

緒方「でも、そろそろ皆、気付きだしているんじゃないかな。本当のラグジュアリーってなんだろうと。それで、それは日本にあると、僕は思うんです。それこそ、日本人には上手く答えられないのだけど、昔から厳然とあり続けている、というような」

齋藤「日本食の世界的評価はそのひとつ。マクロビオティックなんかもそうですね」

 

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