カルチャー

歌舞伎『あらしのよるに』公演記念企画《後編》

中村獅童さんが語る、歌舞伎の世界に感じる「日本らしさ」とは?

2016.12.02

伝統に息づく「日本らしさ」とは?

歌舞伎という伝統芸能の世界に生きる中村獅童さん。後編では【前編はこちら、「伝統」の一端を担う立場にあるからこそ実感している”日本らしさ“について伺った。

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ご自身の生活の中で、「日本らしさ」を意識することはありますか?

獅童さん:一般の方が思い描いている歌舞伎役者のイメージには「和食ばかり食べている」とか「洋楽は聴かない」とか、かなり偏っているものもありますね。さらにいえば、江戸時代の殿様でもないのに「歌舞伎座の楽屋には脇息がある」といわれたこともあります(笑)。

さすがに最近はそういったことはいわれなくなりましたが、それくらい古めかしいものだと思われているんでしょう。とはいえ、僕自身が「日本らしさ」を実感するのは、やはり「和食」です。10月は市川海老蔵さんとともに全国各地で巡業公演を勤めさせていただいたのですが、石川県の小松市や札幌など、いろいろなところで美味しい和食をいただく機会がありました。

僕は今年で44歳になったのですが、これくらいの年代になると和食がもつ繊細さや物づくりへの日本人の精神などについて意識するようになりますね。和食こそ、一人一人の料理人が精魂込めて作り上げた一切ごまかしのきかない料理です。素材、だしが和食の命だと思いますし、盛りつけにも日本人ならではの感性が映し出されていると思います。

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獅童さんはファッションにもこだわりがある方ですが、現代の服には歌舞伎の衣裳に勝るものはないのでは?

獅童さん:それは人からよく言われることで、「あれだけど派手な衣裳を着ていると、何を着てもそんなに面白くないでしょ?」とスタイリストの方に聞かれたこともあります。

確かに歌舞伎の衣裳は、コスプレの最たるものですが、僕自身はファッションも好きです。幼い頃から歌舞伎の世界にいる僕は、日本の色彩の繊細さや美しさに触れてきました。だからこそわかるのかもしれませんが、世界のトップのファッションブランドの洋服は、歌舞伎などで使われている伝統色からインスパイアされているものがたくさんあると思います。

例えば藍染めは江戸時代から続く藍を染料として用いた染め物ですが、色の美しさだけではなく、その独特の匂いが虫除けにもなるという、日本特有の知恵と技術が生んだ逸品です。現在は岡山にあるジーンズの工場でもこの技術が用いられていて、その工場が一流ブランドのジーンズを手がけていることでも知られています。それは日本の技術の高さが信頼されているということだと思います。

ルイ・ヴィトンのロゴを柄としてデザインしたバッグなども、家紋を使ってデザインされた歌舞伎の衣裳の影響を受けているんです。こうしたエピソードを聞けば、歌舞伎と聞くと「難しい」という印象を持っている方にも、実は歌舞伎は「格好いい」ものだと思ってもらえるのではないでしょうか。歌舞伎の持つファッション性やエンターテインメント性を僕自身がメッセージとして発信していきたいと思います。

 

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