新しいものと古いもののあいだに創造的な関係を作り出す建築家、能作淳平

2016.12.20

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長崎五島列島・福江島のプロジェクトではスタッフが島に移住して作業

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前回は兄、能作文徳の作品と建築に対する考え方を紹介した。それに続いて今回は弟の淳平の仕事を見てみたい。
長崎県五島列島の福江島。現在、能作淳平はこの島で築80年の民家を地域の小さな図書館を兼ねたゲストハウスに改築するプロジェクトを手がけている。

「元々はお施主さんが友人たちと島に滞在する別荘をつくるという話からスタートしました。でも年に数回しか訪れることができないので、滞在する以外の期間は地元の人たちに建物を有効に使って欲しいという話に至りました。

地元の方々にお話を伺うと、そのエリアには本を楽しめる場所がないとのこと。そこで1階の一部を土間にして、地域の人たちが気楽に集える図書館にするというアイディアが生まれました」
淳平はプロジェクトの出発点をこのように語った。実際の施工では、設計事務所のスタッフが島に移住。現場管理をしつつ、地元の素材や技術をリサーチし、施工の進捗状況をインターネットを通じて発信した。(http://tomiesiteoffice.tumblr.com/)

なるべく、設計だけで完結してしまうのではなく、建物をつくるプロセスのなかで、島の文化やおもしろいと感じたところをレポートすることを意識したという。

20161220_03 写真(上)/ 富江ライブラリーさんごさん tomie library sangosan 2016 Photo by JUNPEI NOUSAKU ARCHITECTS

「できるだけ現地にある素材や技術を使うことで、地域の文化を継承していくことを目指しました。例えばこの島には溶岩がいたるところにあります。また立派な墓を作る文化もあって、石材加工のレベルが高い。そこで溶岩と石材加工をかけ合わせることで図書館の土間や踏石をつくりました」

島には船舶技術があるために、この地域の外壁は船舶用の防腐剤入りの赤いペンキが塗られ、それが街並みのようになっている。
「この島は珊瑚漁で栄えた歴史があり、この建物の名前にもなっていますが、珊瑚の赤色と街並みの赤をかけ合わせて、この建物のイメージカラーにしました」

設計する側が住人になって初めて見えてくることで、淳平は、このプロジェクトを島の隠れた魅力を再発見することにつなげたいという。
「今あるものに少し手を加えたり、かたちを変えることで、魅力的なものになるということを、伝えたいと考えました」

 

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