アートな武士たちに注目! 野口哲哉展『ANTIQUE HUMAN』

2016.12.16

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息吹を放つ侍たちの姿を、驚くべき緻密さで表現

誇り高く勇猛果敢なイメージとともに、今や世界が知るところとなった日本の侍。その象徴といえば何といっても鎧(よろい)武者ですが、現代風にアレンジされた時代劇やハリウッド映画などの出で立ちを見て「何かが違う」「時代考証がおかしい」と違和感を覚える方も多いはず。

このように日本の武士たちといえば、他の古典的な話題と比較しても世間一般の関心がずば抜けて高く、その人気や想い入れ故に、生半可な覚悟では扱うことが難しい題材です。

その中で、樹脂やプラスチックなどの現代的な素材を駆使して古びた風合いを表現しつつ、虚構とも現実ともつかない唯一無二の人物像を創り出し、大きな話題を集めるアーティストがいます。

写真(上)/『ポジティブ・コンタクト』2011年

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『THE RED MAN 2013』2013年

“シャネル印の鎧武者”で一躍、スターダムへ

野口哲哉、1980年生まれ。大学在学中から樹脂粘土を用いた武人像の制作をスタートし、2007年に東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催された『現代アーティストたちによるLe Monde de Coco —ココの世界』への作品出展で一躍、脚光を集めました。

その作品とは……なんと、シャネルのロゴマークを記した鎧を身に着けて佇む侍の姿! それ以来、野口さんは実物の鎧兜かと見まごうばかりの精巧さで、私たち人間の数分の一サイズの人物像を次々に発表してきました。

その特徴を一言で表すなら、武具の専門家も舌を巻く正確な造形と、実際に使い込まれたかのような風合いを醸し出す完成度の高さ。そして何よりも、それら甲冑を身に着けた武士たち自身の佇まいです。

 

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