プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> vol.8

建築が建築として成立する限界点を模索する建築家、萬代基介(後編)

2016.12.30

rd1700_MG_3463「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー。前回に続く萬代基介の2回目では、彼が手がけたもうひとつの東北復興プロジェクト、そして幅広い活動を支える彼の方法論について話を聞いた。

もう仮設の建物は観たくないという声に応えて

萬代基介は鮎川浜でもうひとつ別の復興プロジェクトも手がけている。「石巻市復興まちづくり情報交流館 牡鹿館」は地域の復興情報や観光情報、歴史などの展示、地域住民や観光客の交流を目的とした施設だ。この建物は復興事業が完了するまでの仮設的な施設して計画されているため、軽量鉄骨を用いた簡素なデザインで安価に建設できることが求められた。

「設計の条件が厳しかったのは事実です。市から提示された予算と工期は、普通のプレハブの建物と同じです。けれども地元の人たちはそんなことは知りません。ただ『家も店も仮設なので、もうこれ以上、仮設の建物は見たくない』という声が大きかった。このギャップをどう埋めて、いかにいいものを作るかが、自分に与えられた役割だと思いました」

(2_2)rd1700_(2_3)rd1700_imo写真(上)/ 石巻市復興まちづくり情報交流館 牡鹿館 Ishinomaki Community & Info Center in Oshika
2016 Photos by Mandai Architects(2枚とも)
(上)外観。建物の外周部は可動式の透明な建具で囲われている。建具を開け放つと、前面道路に向かって建物が広がり、人々を迎え入れる環境が生まれる。
(下)建物の内部。展示室や談話室として使われる部屋は、壁の一部が回転式のパネルになっている。パネルをオープンにして、部屋の外と内を繋げた展示を行うこともできる。

完成した交流館は、「おしか番屋」と同じように、大きな屋根の下に小さな部屋があり、その周りが開放的な半屋外空間となっている。この半屋外空間の外周部には簡易的な透明な引き戸が巡らしてある。この引き戸を開閉することで、街と建築の関係がダイナミックに変化する。
「自分の個性をどう出すかよりも、普通にいい建築をつくりたいと思いました。自分のような建築家が被災地の復興に関わることの評価は、そう簡単には決められないと思います。それは数十年後という時間のスパンを経て、初めて答えの出る問題だと考えています」

 

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