建物のスケールと構造の関係から考える建築家、畝森泰行(前編)

2017.01.10

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「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー4人目は畝森泰行。最初は独立後に設計したふたつの狭小住宅を手がかりに、環境から考える建築のあり方や設計時に重視するポイントについて話してもらった。

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狭小地でも良好な住環境は生み出せる

畝森泰行が設計した「Small House」は都内の典型的な狭小地に建てられた住宅だ。敷地は10坪強(約34平米)だが、地下1階・地上4階の建物のフットプリントは約17平米しかない。敢えて建物の周囲に空地を設けることで、良好な住環境を生み出すことを目指している。
「敷地が小さいことを積極的に考えて、建物のボリュームのスタディを重ねました」と畝森は語る。「狭い敷地いっぱいに建てるのではなく、建物の平面を小さくし、周りに空地を設けると、建築法規の制限が緩和され、より高く積層させることができます。しかも風通しや採光もよくなります」

20170110(3)_rd170020170110(4)_rd1700写真(上)/ Small House 2010 Photos by Shinkenchiku-sha(2枚とも)
(上)通りから見た「Small House」の外観。駐車場を兼ねた空地に面した大きな窓を設けることで、狭い敷地の住宅でも充分に外光を取り入れることができる。(下)2階のダイニングルーム。各階は一辺が約4メールの正方形。右手の壁の一部は大きな開閉式パネルになっている。螺旋階段で繋がった3階はスペアルーム。丸く開いた穴の部分に床の薄い小口が見える。

各フロアはほぼ正方形のワンルームで、各階ごとに天井高が異なる。1階や2階は隣地の住宅との距離が近いので、どうしても暗くなりがちだ。そこで天井高を高くし、窓を大きくすることで、少しでも光が多く入るように工夫されている。また充分な内部空間を確保するために、床の厚さは7センチと極めて薄くなっている。建具の小口とさほど変わらない厚さは、構造設計者との時間をかけた検討作業の成果だ。具体的には鉄骨造の柱の外側に鉄板のブレースをつけて外壁面の剛性を上げるなどの補強策がとられている。

「とても小さな住宅なので、床や建具・家具などの存在感が同じぐらいのほうがちょうどいいと思いました。建物全体が階段で繋がったワンルームとも言えますが、各フロアで切り分けられている感じも欲しい。天井高や窓の大きさでフロアごとの変化が生まれ、いろいろな暮らし方ができるほうがいいと思いました。施主は夏場は半地下のベットルームで寝て、冬はより暖かい上階のスペアルームを寝室代わりにするといった、空間の使い分けを楽しんでいるようです」

 

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