プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> vol.10

使う人や周囲の環境を受け入れる、自然で明快な建築を目指す建築家、畝森泰行(後編)

2017.01.15

rd1700_MG_5184

「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー。畝森泰行の2回目では、現在進行中の東北復興プロジェクトを中心に話を聞いた。

多くの市民の意見を聞くなかから潜在的な声を見つけていった

現在、畝森は東日本大震災で被災した福島県須賀川市で、市民交流センターの設計に携わっている。このプロジェクトは、もともとあった総合福祉センターが被災したため、その跡地に図書館、公民館、子育て支援、市民活動支援などの機能を持つ複合施設を建設するというものだ。2016年4月に着工し、オープンは2018年を予定している。

「この設計では、3つのことを目指しました。ひとつは、様々な境界を超えた交流の場をつくること。もうひとつは、誰もが気軽に集まれる多様な場をつくること。そして3つ目は、施設を利用する市民の姿によって復興の象徴をつくることです」と畝森は語る。

20170115(2_2)_rd1700写真(上)/ 須賀川市市民交流センター Sukagawa Civic Center
完成予想図。5階建ての建物は、各階ごとに床のかたちや大きさが異なる。いくつものテラスの存在が特徴的だ。

設計を始めるに当たっては、市民を対象にしたワークショップを開催。わずか2ヶ月間に25回ものワークショップを行い、1400以上の意見を集めたという。その結果、設計案は当初のものから大きく変わることになった。

「当初は図書館や公民館、子育て支援などの機能を区分けして考えていたのですが、たくさんの意見を聞くうちに利用する側にとってはそうした縦割り的な区分けは大事ではないことが少しずつ見えてきました。むしろそれぞれの機能を融合し、繋いでいくことが潜在的に求められていると考え直しました」

実際の設計では、図書館や公民館、子育て支援などの機能を、「まなぶ」、「つくる」、「はぐくむ」、「あそぶ」といった、動詞の機能に分解。それらを従来の区分にこだわらないかたちで、ひとつの建築のなかに統合している。

例えば本の閲覧や貸出しに関しては、その中核となる「まなぶ」のフロア以外に「つくる」や「はぐくむ」のフロアにも本棚を設置。一時保育の機能を持つ「はぐくむ」のフロアでは絵本や育児書を借りることができる。このように建物全体に図書館の機能を拡張させることで、利用者の利便性が高められている。

 

次ページ《建築の中で人々が動く姿がダイレクトに見えることが復興の象徴》

関連キーワード

Area