伝統工芸の後継者を育てる「京都職人工房」の取り組み

2017.01.07

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西陣織、京友禅、京焼・清水焼、京指物など、多彩な工芸品の産地である京都。職人の数・業種の幅広さとともに、全国随一の京都も、他産地と同様、生活スタイルの変化による工芸品の需要低下、職人の高齢化や後継者不足など、様々な課題を抱えています。そんななか、国際的視野とマーケティング力を兼ね備えた若手職人を育て、伝統産業を活性化させようと、2012年に京都府が立ち上げたプロジェクトが「京都職人工房」です。

第一線で活躍する講師陣によるゼミや講座、異業種との交流会、展示販売イベントの開催など、多方面に職人をサポートし育成する「京都職人工房」から、伝統の技術を生かした今までにないプロダクトや、メディアに取り上げられる作家が次々と生まれています。

売る先を見据えたものづくりを

「京都職人工房」は、京都府を拠点に活動する伝統産業従事者であることなど、一定の条件を満たす方を対象に選考を行い、選ばれた参加者がたった3万円の年会費で、ゼミや講座の受講をなど様々なサポートを受けられる画期的なプログラムです。

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写真(上)/ 山崎伸吾さん。1978年岡山県倉敷市生まれ。2012年より京都職人工房ディレクター。2016年11月、工芸に関するウェブマガジン「KYOTO CRAFTS MAGAZINE」を立ち上げる。

企画・運営など全体のディレクションを行うのは、京都リサーチパーク株式会社の山崎伸吾さん。山崎さんは京都精華大学を卒業し、前職はデザイン会社に勤務。クリエイティブな情報を発信するウェブマガジン「Refsign Magazine Kyoto」や、インディペンデントなクリエイターがカフェやワークショップ、イベントを行うオルタナティヴスペース「Social Kitchen」を主宰するなど、京都のカルチャー界隈を盛り上げてきた人物です。

そんな山崎さんにとって、伝統工芸は未知の世界であったと言います。
「京都職人工房を立ち上げる前のこと。岡崎にある京都伝統産業ふれあい館で、職人さんが竹籠を作る実演を見ていた時、ふと気になり、この籠1つ作るのには何日かかるのか尋ねてみました。
すると、3日かかるという答えが返ってきました。いくらで売るのかと聞くと、なんと8,000円。伝統工芸が抱える、簡単には解決できない問題に触れてしまったように感じました」。

しかしその後、山崎さんが主催し、工芸ジャーナリスト・米原有二さんが監修を務めた工芸の展覧会で、同世代の職人に出会い、彼らと問題意識を共有できたことで、伝統工芸の未来に希望が持てたそうです。「ただ作るだけではなく、売る先を見据えたものづくりこそが、今後の伝統工芸に重要なのだと考えました」と山崎さん。

作って終わりではない。売る先まで考えてデザインする

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写真(上)/ 金谷 勉さん。1971年大阪生まれ。有限会社CEMENT PRODUCE DESIGN代表取締役。企業や商業施設の販促企画や商品企画開発・ディレクションなどを手がけるほか、日本各地域における地場産業との協業企画にも積極的に関わる。

「京都職人工房」のゼミの講師を務める金谷 勉さんは、ブランディングから商品開発、販路の開拓まで総合的に手がけるデザイン会社「CEMENT PRODUCE DESIGN」の代表です。

「商品開発をゴールとせず、売る先まできちんと考えてデザインする金谷さんの手法が、伝統工芸のものづくりを変えてくれるはずだと思い講師になってもらいました」(山崎さん)。

金谷さんのゼミでは、一人一人商品をどこで売るか具体的に定めてから、そこで売るためのリサーチ方法や、原価の設定など手順を踏んで学んでいきます。

「京都に限らず伝統工芸は分業が基本です。一つの着物を作る過程にも、いくつもの工房が関わっています。そのため各々の工房は、自分だけで一つの物を作り上げるだけの技術はなく、産業が衰退するとたちまち廃業してしまいます。生き残るためには、自分の持っている技術を生かして、どのような新しいものを作るか考えなければいけません。
そして、新しいものを作り出す時に、忘れてはいけないのが『作って終わりではない』ということ。作ったものが、世の中のニーズに合っていなかったら売れないし、そもそも売る場所がなく、認知されなかったら、欲しいと思っている人に届けることすらできないのです」(金谷さん)。

 

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