カルチャー

プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ>Vol.15

建築と街の新しい関係をつくる建築家、teco(金野千恵+アリソン理恵)(前編)

2017.02.10

(1)rd1700_MG_8321「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー。7番目に登場するのは金野千恵とアリソン理恵のふたりだ。最初は彼女たちが手がける福祉・介護系施設のプロジェクトを中心に話を聞いた。

街とともにある介護施設を

tecoは金野千恵とアリソン理恵のふたりが2015年に立ち上げた建築設計事務所。彼女たちが設計を手掛け、品川区で計画中の『幼・老・食の堂』は、高齢者の介護施設と保育所、地域の食堂という三つの機能を持つ複合的な施設だ。3階建の建物だが、個々の機能を各階に振り分けるのではなく、各階に機能が混じり合うように配置されている。

「依頼主と話すうち、様々な課題は魅力へと転化する可能性があることがわかりました。不足する介護の担い手を、組織の内側のみで解決するのではなく、地域の多世代の人で互いに支え合おうという意識は、これまでの福祉施設に比べてとても開かれています。これを空間として実現するため、用途をこえて空間が連続し、家具などで仕切ることで、様々な人が各々に過ごせる居場所を併存させています」

(2)rd1700_20170210(3)rd1700_20172010写真(上)/「幼・老・食の堂」/ Care Hall for child, elderly and dining 上:建物の反復や空地によるまちのリズムと呼応しておおらかにボリュームを分節し、様々な半屋外の居場所を外観に現している。下:キッチンを中心とした看護小規模多機能型居宅介護施設、保育所、まちの食堂は、繋がりながら家具や仕上げの切替で分節されている。

金野千恵は『幼・老・食の堂』のコンセプトをこう説明した。またこの建物には、地域の人々との交流を生む仕掛けとしてロッジアやテラス、屋上菜園といった半屋外の居場所を設えている。このうちのロッジアとは、イタリアの街並みによく見られる建築要素で、外気に向かって大きく曝された廊のことである。日本語では「涼み廊下」とも呼ばれる。

(2)rd1700_MG_8050写真(上)/ 金野千恵

金野はスイスに留学中にペーター・メルクリを通してロッジアと出会って以来、それを長年の研究テーマとしている。大学院に在籍中に設計した「向陽ロッジアハウス」は彼女のデビュー作で、その名前のとおり大きく口を開けたロッジアを中心に据えた住宅となっている。金野はロッジアの持つ可能性を次のように語った。

(5)rd1700_20170210写真 /(上)「向陽ロッジアハウス」/ Sunny Loggia House 2011 上:庭から見た建物の正面外観。1階には各部屋からアクセスできるロッジアが設けられている。下:ロッジアは各部屋をつなぐ外廊下であると同時に、さまざまな用途に使える半屋外的スペースにもなっている。

「ロッジアに興味を持ったのは、特段の用途がなくとも、建築と街の関係を常に多彩に映し出すからです。イタリアでは、ただ道行く人を見ていたり、編み物をしていたり、ロッジアを見るとその町の暮らしが分かります。介護の空間でも、こうした半屋外の空間を多様にもつことで、入居者の畑いじりや、スタッフの地域と繋がる場がうまれ、街全体による見守りが自然と生まれるのではないかと考えています」

 

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