プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> Vol.17

スケールの大きい自由な発想で建築の枠を広げる建築家     海法 圭(前編)

2017.02.20

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「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビューは8回目を迎えた。今回紹介するのは海法 圭。前半では彼の自由な発想の成り立ちや建築家を志した経緯などについて話を聞いた。

誰のものでもない土地を新たに作りたい

建築の設計や提案は多くの場合、現実の土地や使用目的を前提にした高い実現可能性が求められる。しかしときには実現可能性に捉われないスケールの大きな提案が行われることもある。ル・コルビュジエが提案した理想の都市、菊竹清訓の塔状都市や海上都市など、建築の歴史ではいくつもの例を見ることができる。

海法圭は現在の日本の建築家のなかでは珍しく、スケールの大きな発想を得意としている。彼が提案する『水上のかもしかみち』では、2020年の東京オリンピックのために東京湾上に大規模な仮設のプラットフォームを構築する。

プラットフォームは原木を利用した「筏の大地」と世界中から船舶を集めた「ふねの城」から成り立っている。広大な「筏の大地」の上ではテント村やフェスなど多彩なイベントが催される。またベイゾーンに点在する施設や埋め立て地を繋ぐ「筏の大地」は、歩行者のための交通路としても役立つという。

(3)rd1700_kamoshika1(4)rd1400_kamoshika2写真(上)/「水上のかもしかみち」Raft Earth
東京湾のベイゾーンに大量の筏を浮かべてつくる「筏の大地」と船舶の集合体である「ふねの城」。海上のプラットフォームは市民の活動に解放され、「ふねの城」は宿泊施設のほか、電力を供給するインフラとしても機能する。

「『筏の大地』は誰のものでもない土地を作るという発想から出発しています。今の日本ではすべての土地が私有か公有であり、誰のものでもない土地は存在しません。この状況はとりわけ都市において顕著に感じられ、生活にある種の窮屈さを感じていました。それに対するオルタナティブな案を考えてみました」

海法は『水上のかもしかみち』のコンセプトをこのように語り始めた。「筏の大地」では伐採期を迎えつつある国内の人工林を最大限に活用する。筏に使われた原木はオリンピック終了後には建築資材や自然エネルギー源として再利用される。また大小さまざまな船をつなぎ合わせた「ふねの城」は、最大17000人を収容する選手村として機能する。オリンピック終了後にはすべての船は帰港し、施設としての実態は消滅する。

「2020年の東京オリンピックでは、民間事業者が参画し湾岸の選手村を建設し、終了後にはマンションとして再利用されます。しかし今まで都心にとっての余剰の場所としての価値を保ってきた湾岸に、都心と同じようなマンションが林立する風景がよいとはあまり思えません。そこで世界中の豪華客船を誘致して選手村にすることを提案しました」

 

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