プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> Vol.19

建築を具体的な人間の営みの場として強く意識する建築家、   中川エリカ(前編)

2017.03.01

_MG_1172 copy「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー。9回目は中川エリカ。前半では独立後の最新作である「桃山ハウス」を中心に話を聞いた。

既存の状態が持つ「豊かさ」を活かした「桃山ハウス」

熱海市の桃山町は海を見下ろす山の斜面にあり、古くからの保養地として知られる。「桃山ハウス」は都内に住まいを持つ施主のために建てられた二拠点住居で、別荘よりも積極的な利用を想定している。敷地は山腹を走る道路のヘアピンカーブの部分に面している。高低差がある土地は擁壁を兼ねた塀で囲まれていて、施工前には過去の所有者のものだった庭木や庭石が残されていた。中川の設計はこの既存の状態が持つ「豊かさ」を活かすところから始まったという。

「敷地はすでに既存の塀で囲まれているような場所でした。その特徴を活かすために、塀よりも背の高いところにフラットな屋根を掛けて、その屋根を支える架構(柱と梁で構成される構造)を考えました。そして屋根の下に、ここでの生活に必要なキッチンやトイレ、ベッドや浴槽などを配置していきました。

寝室や浴室にこれくらいの大きさが欲しいという話は、実際に使う人の要望に沿ったほうが、愛着を持って長く使って貰えます。だから私は、住宅の平面は住む人を応援するためにあるほうがいいと思っています。逆にどのような平面が求められても、それを受け止めることのできる架構があればいいわけです。屋根は14本の柱で支えていますが、内部の柱は2本だけ。部屋だけでなく庭の配置やサイズにとっても邪魔にならないよう、屋根から水平に梁を出して、屋根の外側に追い出した柱が多くあります」

rd1700_momoyama1momoyama(2)momoyama(3)写真(上)/ 「桃山ハウス」Momoyama House 2016  Photos by 鳥村鋼一(Koichi Torimura) 
(上)建物の外観。ブロック塀と樹木はもともとの敷地にあったものを残している。(中)建物の内部。天井が高く、開放的な空間のなかに個別の機能を担うスペースが組み込まれている。(下)屋根の下の半屋外のスペースは庭と一体化しつつ、敷地外の街並みとの繋がりも生んでいる。

中川は「桃山ハウス」のコンセプトをこのように説明した。おおらかに架けられた屋根の下に、いろいろな用途の部屋を用意する。部屋の床面積は屋根の半分だけなので、周囲には軒下のような半屋外の空間や庭が生まれる。また庭の一角には客間としても使える離れの茶室を設置。敷地の内と外が塀によって明確に区切られているのとは対照的に、室内と外の庭の関係は、敢えて境界が曖昧になるように考えられている。

 

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