前編

日傘に想いを込める、ブランド「Coci la elle(コシラエル)」/主宰・日傘作家 ひがしちかさんインタビュー

2017.03.08

Kasa_03-minphoto: 江森康之

手にしてわかった、職人による感動的な手仕事

閃きに突き動かされ、なんの知識もなくゼロから始めた傘作り。試行錯誤する中で、ひがしさんは日本製の傘の素晴らしさに気づきます。

「最初は日本製にこだわっていたわけではないんですけれど、実際に物を見比べたら全然違うんです。骨ひとつ、ハンドルひとつ、露先ひとつとっても、職人さんが作る日本製の傘はとても素晴らしくて、結果日本製になったという感じです。

傘業界は分業制で、ハンドルや露先などのパーツを作る人、生地を裁断する人、張る人、縫製する人、最後に仕立てる人と分かれていて、昔は畳み屋さんもいたそうです。例えばハンドルの場合、量産されている物は型に樹脂を流し込んで作りますが、これは職人さんがアクリルの板を切って成形した後に1本ずつ熱を加えて曲げ、冷やし固めて穴を開けています。色も1本ずつ染めていくので、見ていると結構感動しますよ。でも、それが伝統工芸ではないところも傘の面白いところ。傘ってエジプト時代からあって形もあまり変わらない。あまりにも普通過ぎて、日用品として生活に入り込んでいて、ずっと同じ工程で作り続けられているんです」

しかし、外国製の傘が1本300円程で大量生産される現在。その煽りを受けて、20年ほど前から国内にあった傘工場は次々と廃業に追い込まれていると言います。

rd1700_Kasa_08photo: 阿部健

「本当にわずかなんですけれど、今でも素晴らしい腕を持った職人さんたちが日本にはいます。そこで、いっそ振り切って職人さんたちのすごい技を活かし、そこに自分がやりたかった絵を1点ずつに施す。狙ったわけではないんですけれど、企業が物を安く大量生産して物が使い捨てされていくことに対して感じていた疑問とも、ちょうど合ったという感じです。

日本製にこだわるもうひとつの理由は、職人さんとのやりとりが楽しいから。外国にいる顔の見えない人とやりとりするのは、私の場合は想像ができなくて。実際に工房を訪ねて『ここをもうちょっと削りたいんです』と言うと、『嫌だよ。できねーよ』とか言いながらも(笑)、きちんとやってくれるその姿勢だったり、美味しいお茶を出していただいたり。そういった些細なことが全部、できあがった傘に反映されているんですよね」

後編では、コシラエルの集大成とも言えるビジュアルブック「かさ」(青幻舎より刊行)のお話を中心に、表現することに対しての想いをさらに深く伺いました。

DSC05064-min【プロフィール】
ひがしちか
1981年長崎県生まれ。文化服装学院を卒業後、2010年に1点物の日傘屋 Coci la elle(コシラエル)を立ち上げる。日傘の他にオリジナルプリントの雨傘やスカーフ、小物などを展開。清澄白河にアトリエを備えた「コシラエル本店」を構える。近年は本の装画や執筆も手がけ、現在リニューアル中の東京都現代美術館が主催するアートプロジェクト「MOTサテライト」のイメージビジュアルを担当。絵を軸にした布にまつわるプロジェクト「meme」のメンバーとしても活動中。2月下旬に初のビジュアルブック「かさ」を青幻舎より刊行【詳細はこちら】。

Coci la elle(コシラエル):http://www.cocilaelle.com/
オンラインショップ:http://store.cocilaelle.com/

 

■イベント情報
Coci la elle (コシラエル) ビジュアルブック「かさ」刊行記念フェア
日時:3月1日(水)~3月15日(水)
会場:代官山 蔦屋書店 2号館1階 ブックフロア
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2017/02/coci-la-elle.html

 

取材・文/大塚綾子

 

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