平野啓一郎さんが語る、物語のつくり方 書籍「文学とワイン」刊行記念イベント

2017.03.10

銀座のワインショップ「エノテカ・ミレ」に毎回一人の作家を迎えて、ワインとともにトークを楽しむ知る人ぞ知るイベント「文学ワイン会 本の音 夜話(ほんのねやわ)」。

名だたる作家の方々10名をお呼びして行われたそのトークイベント(計10回)の様子をまとめた書籍『ワインと文学』が、出版されました。その刊行記念イベント、1回目は田中慎弥さんが登場し、作家のホンネを語って頂きました。【前回の記事はこちら】2回目は平野啓一郎さんのイベントの様子をレポートします。

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『文学とワイン』刊行記念イベントの第2回は平野啓一郎さん

ところで、『文学とワイン』の元になった「文学ワイン会」の発案者は平野さんなのだそう。講演会などで作家の話を聞く機会はあるが、もうちょっと違うかたちで話を聞きたいという要望もあるのでは、という平野さんの言葉を実現させたのが、同会の始まりとなったのだといいます。そこで刊行記念イベントの最後に、登場していただきました。

平野さんは以前、ワインの品評会に参加したこともあるそうで、その話から始まりました。

「昔、フランスのブザンソンに講演で行ったとき、町のワインの試飲会に行きませんか、と領事館の人に誘われて。ヴァン・ジョーヌという、その地方独特の黄色いワインだったのですが。で、ただ楽しく飲む会だと思って行ったら、すごくマジな試飲会だったんです(笑)。その年のNo,1を決めるという会で、その審査員のひとりになっちゃったんですね。それでフランス語でいろいろ言わないといけないわけですよ。飲んだ後味とか、それがどれくらい続くかとか、色とか、香りとか。で、ほかの人の話を聞いていると、独特の表現や言葉があることがわかって」

ワインの表現には特別な言葉があり、平野さんは図らずも、その学習をしてしまったわけです。

「フランスにはワインの香りを小さな瓶に入れたサンプルみたいなのがあるんです。全部で54種類あるその瓶を開けて匂いを嗅いで、干し草の匂いとか、革の匂いとか、勉強するのだそうです。そういう基本的な香りを前提に表現しているみたいで。だからそれとは大きく違うと、どんなにクリエイティブな表現をしても、あまり通じないようなんですね」

rd1700_(2)DSCN0789そして話は文章での味の表現に続く。

「文章から味は伝わらないですけど、伝わらないからこそ、それを文章で表現するという方向はある気がして。でも、難しいですよね。小説の中で料理の味を、舌の上でどうのこうのしてみたいな文章になると、ちょっとね……あんまり食事の描写は多くないですね。まぁ簡単な描写はしますけど」

ただ、料理を食べながら小説のことを考えることはよくあるという。

「たとえば、コース料理とかを食べると、やっぱり小説もこうじゃなきゃいけないなぁ、と思うことがありますね。メインがイマイチなコースってあるじゃないですか。前菜、スープと、ずっと凝ったものを持ってきたのに、最後にメインがすごくがっかりとか。そういう小説はよくないなと(笑)。冒頭から思わせぶりな展開で、最後にメインディッシュになる場面で美味しくないと、やっぱり、ちょっとなと。」

 

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