史上最大級の「樂焼」の展覧会が京都から東京へ巡回

2017.03.17

rd1700_(1)raku写真(上)/ (左)好評のうちに終了した、京都展の展示風景(右)現在開催中の東京展の展示風景 茶碗に当たる光の量は控えめで、茶室で自然光を頼りに茶碗と対峙するような体験ができる

当サイトでもお伝えした、注目の展覧会、【こちらよりご覧下さい】2016年12月17日〜2017年2月12日に京都国立近代美術館で開催された「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」が、3月14日より東京国立近代美術館へと巡回します。決して見逃せない、大変貴重な展覧会の見どころをご紹介致します。

樂焼450年の歴史を現代の視点からひもとく

16世紀後半、豪華絢爛な安土桃山文化の時代に、それとは対極となる「わび・さび」の感性を提唱した千利休。マルセル・デュシャンが便器を美術館に持ち出すよりも数百年前に、漁師の魚籠を茶室に持ち込み花入れにするなど「価値の転換」をうまく利用して、今でいう現代アートに近い動きをしていた利休ですが、その精神世界を陶工として形にしてきた樂家の祖・長次郎の作品からも、現代にも通じる前衛性を見て取ることができます。

例えば、長次郎が制作した『黒樂茶碗』。装飾が極限まで削ぎ落とされながらも、強い存在感を漂わせるこの茶碗からは、「無作為」という新たな価値基準を打ち出そうという強い制作意図を感じられ、そこには、反骨精神が隠れています。

驚くべきことは、そのアヴァンギャルドな精神と焼き物の技術が、十五代(当代)樂吉左衞門に至るまで450年間、途絶えずに「一子相伝」で伝えられてきたということです。一子相伝とは、技術や学問などの秘伝や奥義を、自分の子の一人だけに伝えて、他には秘密にして漏らさないこと。

rd1700_DSC05120写真(上)/ 東京展の展示風景 初代長次郎、光悦の重要文化財から現代までの作品が展示されている

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写真(上)/(左)初代 長次郎『黒樂茶碗 銘 大黒』桃山時代(十六世紀)、重要文化財、個人蔵 (右)十五代 樂吉左衞門『焼貫黒樂茶碗 銘 暘谷』平成元年(1989)、個人蔵

樂の歴史を、京都国立近代美術館学芸課長の松原龍一さんは「伝統という言葉では片付けられない不連続の連続」と語ります。それぞれの時代の樂の担い手が「今-現代」性を追求し、もがき苦しみながらも「自身の作品」を生み出してきたという事実こそが、樂の歴史。従来、樂焼など伝統的な工芸品の展覧会は博物館で行われることが多いものですが、「近代美術館」で行うにあたり、松原さんが重要視したのがこの「今-現代」性だそうです。

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写真(上)/ 樂家十五代当主・樂吉左衞門氏、自ら撮影した写真を和紙にジークレープリントした作品など、実験的な作品も多く見られた(京都展で撮影)

 

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