プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> Vol.22

ユーザーの主体性を育む建築を目指す建築家、青木弘司(後編)

2017.03.15

(1)_MG_1525 copy-min「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー。青木弘司の2回目では、ユーザーの主体性を喚起する建築という観点で、自らの作品について語ってもらった。

住み手が持続的に自ら手を加えていく仕組みをあらかじめ組み込む

一連のリノベーションの設計プロセスのなかで青木が強く意識したのは「生きられる空間を設計する」という考えだ。一般的に建築家の作品は、建物が竣工し、施主に引き渡されたときが完成形だと考えられている。

竣工時を、あたかも画家が自らのタブローに署名する瞬間と同じようにとらえるならば、竣工後に建物がユーザーによって使われていくプロセスは完成形からの逸脱になってしまう。もちろん設計者は設計段階で完成後の使い方を想定しているが、現実の使い方はその想定の範囲内に収まるとは限らない。

青木が考える「生きられる空間」とは、このような計画と経験の間にある宿命的なジレンマを認めつつ、ユーザーの主体性によって空間が日々更新されていくことを肯定的にとらえる思考によって立ち現れるものに他ならない。

「批評家の多木浩二さんが『生きられた家』という本で、住みこなされた家と建築家の作品の間には埋めがたい裂け目があるとし、その対立と相関の間に空間言語の多様さの一切が生じ、関係し合っていると述べています。リノベーションに関わるなかで、この長年アンタッチャブルな領域に留まっていた『生きられた家』の問題に改めて向き合ってみたいと思うようになりました」

それでは住み手の主体性を育むようなデザインとは何か? 『調布の家』や『我孫子の家』では、リノベーションの過程で、住み手が持続的に自ら手を加えていく仕組みをあらかじめ組み込んでいるという。

「例えば、ホームセンターで買えるような材料も敢えて使っています。そうすることで、住み手が後で造作の追加を行ったとしても、何となく調和が生まれますし、ありふれた身近な材料を組み合わせ、あらゆるモノが見えるように設えることで、空間の成り立ちを感覚的に理解できるようになっています。このような簡素で緻密な操作が、『空間の成り立ちを知り、自ら手を加えることで身の回りのの世界を変えていく』という、ある種のDIYの精神を喚起するのだと思います」

 

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