建物をつくることで物語を紡ぐ建築家、大西麻貴+百田有希(前編)

2017.03.25

(5)_MG_2476-min建築家に必要なのは想像力を膨らませていく言葉

2015年に竣工した『小屋と塔の家』も『二重螺旋の家』と同様に都内の小さな敷地に建つ個人住宅だ。建物は路地に面した敷地の手前から奥に向かって、3つのボリュームから構成されている。いちばん手前には半地下の小さな小屋、その後ろにはキッチン、シャワールーム.浴室など水回りを集約した3階建の棟がある。そしていちばん奥は、4m角ほどの居室が積み重なった5階建の塔になっている。

「この住宅は周囲の環境との応答の中でデザインされています。小屋は離れとして使っていますが、街と距離が近いので、将来的にはカフェやギャラリーにすることも想定しています。いっぽう塔の部分は4階が他の階と分かれた感じになっています。空中にある、もうひとつの離れに行くというイメージです」

百田は全体のコンセプトをこう説明する。この建物を魅力的にしているのは、周囲の環境に完全に溶け込むのでもなければ、異物としての存在が際立つものでもない、街並みとの微妙な距離感だろう。

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(8)20170325写真(上)/ 小屋と塔の家 2015 Photos by Shinkenchiku-sha
(上)建物の外観。手前の平屋と塔の最上階というふたつの「離れ」を持つ住宅。外階段を設けることで、屋上やテラスが生活の場の一部となるように設計されている。(中)「空中の離れ」と呼んでいる5階建ての居住棟から外壁と一体化した外階段を見下ろす。(下)1階のダイニングからキッチンを介してはなれを見る。

さらに大西が言葉を続けた。
「この住宅を設計した当時は、事務所が中目黒にありました。近所を歩いていると、3階建てのマンションが立ち並ぶ街並みのなかに、小さな平屋の家を見つけることがありました。それらの家は街並に呼応しているけれども、街並に合っているわけではない。『小屋と塔の家』では、そういった風景や、違う空気が流れている場所をつくりたいと思いました」

大西と百田にとって、建物をつくることはひとつの物語を紡いでいくことに似ているという。個々の設計は、敷地や予算、施主の要望など様々な現実的な問題への回答である。しかし同時に、建築家にはそれらを乗り越えていく飛躍が求められる。そこで重要なのは言葉であり、日常生活を乗り越えていくような想像力の働きであると、百田は語った。

「建築を作ることは、言葉を発見して語っていくことと不可分です。建築は実物を見てもらうのがいちばんですが、行かなければ見れないし、出来ていない建築は見ることもできません。そこでは想像を膨らませていける言葉で話すことはとても大切で、それによって施主や一緒に働く人たちとイメージを共有することができます」

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【プロフィール】
大西麻貴(おおにし・まき)
1983年愛知県生まれ。2006年京都大学工学部建築学科卒。2008年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2008年大西麻貴+百田有希/o+h設立。2016年より京都大学、横浜国立大学、法政大学非常勤講師。

百田有希(ひゃくだ・ゆうき)
1982年兵庫県生まれ。2006年京都大学工学部建築学科卒。2008年京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。2008年大西麻貴+百田有希/o+h設立。2009~14年伊東豊雄建築設計事務所勤務 。
http://onishihyakuda.jp/

取材・文/鈴木布美子、撮影/岸本咲子、コーディネート/柴田直美

 

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