先鋭表現集団WOWの展示に見る「生活不必需品」の可能性

2017.05.02

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世界に誇るテクノロジー×アート表現の先鋭集団

2015年、世界最高峰の栄誉に輝くステージで、ある日本のクリエイティブ集団が放った鮮烈なる印象——。第58回グラミー賞の授賞式、レディー・ガガによる故デヴィッド・ボウイのトリビュートステージ。熱唱するガガの顔面に、稲妻やクモなど、ボウイモチーフのメイクがリアルタイムで投影されていく……!

人々を驚嘆の渦へと誘ったこのフェイスプロジェクションマッピングを手がけたのが、東京・仙台・ロンドンに拠点を置くビジュアルデザインスタジオ「WOW」。その実績は、ファッションブランドのランウェイ演出から、ラグジュアリーなスポーツカーやプロダクトなどのブランディング映像、東京駅八重洲口グランルーフにおける全長200メートル以上の映像インスタレーション、独自コンセプトで打ち出されるアート作品に至るまで。

このように先鋭的な映像×空間表現で知られる彼らですが、世界的デザイナーのマーク・ニューソンがデザインを手がけた日本刀『aikuchi』を発表するなど、日本の粋を注いだものづくりにおいてもいま、熱い注目を集めているのをご存知でしょうか。

写真(上)会場風景より、『SHIZUKU』の展示

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『WOW Showcase —生活不必需品の必要性—』エントランス風景

WOWのプロダクトレーベル「BLUEVOX!」

WOW発のプロダクトレーベル「BLUEVOX!」。彼らがこれまで映像などの視覚表現=ビジュアルデザインで培ってきた、3Dデータにおけるフォルムや質感、ライティングなどの感性や技術を実在のモノに落とし込むべく、2015年にスタートしたプロジェクトです。

一つひとつのプロダクトの背景に確固たる世界観を追求し、それを高い完成度で実現するために、日本各地に息づく職人技術を注ぎ込む。これまでは展示会など限られた場所での発表が中心だったBLUEVOX!ですが、現在、東京・表参道のファッション複合ビルGYREのギャラリースペース「EYE OF GYRE」にて、その進行形の全ラインナップがお披露目されています。

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1枚革を折りたたんでつくられるバッグ『A SQUARE』

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『A SQUARE』の展示風景

正方形の革を折りたたんだ構築的バッグ『A SQUARE』

展覧会のタイトルは『WOW Showcase —生活不必需品の必要性—』。

この「生活不必需品」という言葉こそ、BLUEVOX!のものづくりの核心。過剰なまでに世に溢れる利便性重視のモノたちに対して、本当の意味で生活を豊かにするモノとは何か。手に入れた時の喜びや、想いとともに増していく愛着、他の何物にも代えがたい奥行きを生活に与えてくれる品々に対する姿勢が、このコンセプトに表れています。

ではいざ、展示会場へ。エントランスを抜けた最初の空間に並ぶのは、BLUEVOX!の第1弾プロダクト『A SQUARE』。

正方形の革を折りたたんだ構造で、折り紙を思わせるフォルムのクラッチバッグ&トートバッグ。目を惹く質感は、革×金箔、革×銀箔×漆など、高い職人技術によって実現したもの。そのコンセプトや制作工程を表現した映像が、現物に重なるようにプロジェクションされ、プロダクトに込めた美学や想いを感じ取ることができます。

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超極薄の漆器『SHIZUKU』と、その展示風景

職人の新技法×最新技術による超極薄の漆器『SHIZUKU』

その奥の小部屋は、第2弾プロダクトとして発表された酒器『SHIZUKU』の世界観を体現した空間。

日本を象徴する工芸技法である漆工芸は、塗り椀であれば木地などの素地に漆を塗り重ねることで、耐久性・耐水性とともに美しい質感を表現します。しかし『SHIZUKU』では、素地を必要とせずに漆だけで形を作り出す新技法を導入。これを3Dプリンターなどの最新技術と掛け合わせることで、漆塗りの常識を超えた薄さと自由な造形を実現しました。

漆特有の美を引き出しながら、水の滴(しずく)を思わせる3次元曲面が形作られていく様子が、プロダクト×映像インスタレーションによって表現されています。

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極限のミニマムを追求したスツール『AXIS』と、その展示風景

オブジェのように佇むミニマムなスツール『AXIS』

続く第3弾プロダクトの『AXIS』の展示は、『A SQUARE』と同じ空間の一角。

美しいオブジェのように佇むこのスツールは、プロセスから完成形までを極限レベルに削ぎ落としてデザインされたもの。プロダクト実物と映像に加え、『AXIS』を構成するパーツとしてNC旋盤(刃の動きを数値制御する機能を備えた精密加工機器)で削り出された真鍮とステンレスの無垢棒が宙に浮かび、ミニマムなフォルムに込められた思想を表現しています。

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BLUEVOX!の新作照明『LUX 』のコンセプト展示風景

“光の振る舞い”をデザインした灯り『LUX』

そして第4弾プロダクトとなるのが、今回の展示をもって初披露される新作『LUX —ルクス—』。

ほの暗い部屋の中央、三角柱のオブジェから放たれた陰影が、空間全体に移り変わる幾何学紋様を描き出していきます。思わず見入ってしまうような叙情的な美しさと、いかなる技術によって発せられているのかわからないという謎めいたインパクトに、思わず心を奪われます。

この透過型液晶を用いたコンセプト展示の傍らには、『LUX』のプロトタイプが。光を放つ幾何学的なフォルムのシェードが、内部の白熱球の熱が生み出す対流によってゆるやかに回転。流れゆく陰影とともに、空間をほのかに演出します。

ガラス製のサボテン水栽培容器や花器で人気を集めるブランド「10¹² TERRA」とともに、光の変化が室内環境に及ぼす効果を探求した、美しくコンセプチュアルな灯り。“光の振る舞い”そのものをデザインするという発想もさることながら、既存の照明器具にはない自然で心落ち着く存在感は見事の一言。発売が待ち遠しいところです。

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『LUX』のコンセプト展示と、プロダクトのプロトタイプ3点

WOWから始まるものづくりの新たな展望

それぞれに異なる佇まいと印象を放ちながら、“機能性を持ったアート作品”とも呼ぶべき美しさと思想を湛えたBLUEVOX!のプロダクトたち。それは、いわゆる“映像制作会社”とは一線を画した彼らの世界観、確固たる思想からアウトプットとしての表現をデザインしていく姿勢の、新たな発露といえるでしょう。

折しも今年はWOWの設立から20周年。その節目を飾る展覧会を、映像ではなくプロダクトで構成するという意欲的な試み。WOWから始まるものづくりの新たな展望に、期待が高まる展覧会です。

 

■お問い合わせ
『WOW Showcase —生活不必需品の必要性—』
日時:4月14日(金)〜6月27日(火)11:00〜20:00 不定休
場所:EYE OF GYRE 東京都渋谷区神宮前5-10-1
電話:03-3498-6990

※展示プロダクトのうち『LUX』以外は「BLUEVOX!」公式サイトで購入可能
http://www.bluevox.tokyo/

文/深沢慶太

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