伝統工芸に新しい風を吹き込む和傘職人 西堀耕太郎氏の挑戦【後編】

2017.08.26

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「伝統は革新の連続である」を企業理念に、京都の老舗和傘工房の5代目として、そして国内外のデザイナーとのコラボレーション商品の開発やプロデュース・コンサルティング業務まで広く活躍する西太郎氏。西堀氏がプロデュースし、コレド室町に期間限定で出店する「わとな WATONA」にて、同氏に話を聞くことができました。日本全国の匠の技と世界のデザイナーとの出会いによって生まれた商品を数多く取りそろえる「わとな WATONA」のショップには、和の雰囲気を感じさせる扇形のトートバッグや、苔を升に詰め込んだ手のひらサイズのグリーンインテリアなど、新しいスタイルのMade in Japanのアイテムが数多く並びます。プロデューサーでありつつも、多くの商品を自らも購入し、自身を「良い客」、と称する西堀氏。日本が古くから受け継ぐものづくりに現代のエッセンスをプラスし、「和傘から宇宙船だって作れるかもしれない」と語る同氏が語る、日本の伝統工芸のこれから、そしてこの先やってみたいこととは……?

 

――今、伝統工芸は後継者不足が叫ばれていますが、西堀さんのように和傘から宇宙船だってできてしまうかも、なんていう未来図にはすごく夢があって、そういうことを若い世代に伝えることが、後継者不足の解決になるのではないでしょうか。

今の若い人たちは、伝統工芸では食べて行くことができないと思いこんでいるし、そして伝統工芸という仕事に対して誇りや夢が持てないと思っています。でも、本当にそうですか? と問いたい。

確かに伝統工芸品を作る人は減ってしまっているけれど、だからこそ、オンリーワン、世界シェアNO.1にだってなれる可能性があるんです。伝統工芸品はすでに何百年という伝統を背負っている。それをまたゼロから作るのは難しいから、伝統産業に大手企業は参入してきません。何代も続けてやっていく、ということはそれだけ素晴らしいことで、誇らしいことなんです。

僕が作る照明器具「古都里 –KOTORI-」は伝統工芸の技術が活かされている一方で、デザイン照明であることが求められているからそこには現代の技術も必要とされている。自分達の技術だけでなくて他の職人や現代の技術とコラボする。そうすることで伝統の中から新しいものが生まれ、それがまた新しい伝統になるんです。1000年前に魔除けだった和傘が雨傘になり、照明になり、次の時代にはロケットになっているかもしれない。すごく夢があると思いませんか?

繝吶・繝ォ

和傘の技術を「ベール」に取り入れたもの

僕は元々伝統工芸の家の出身ではないし、デザイナーでもない。ビジネスを勉強したわけでもないけど、今「グローバル老舗ベンチャー」として伝統工芸から新しいものを創りつづけています。僕が他の人と違ったのは好きであきらめなかったということだけ。みんなが反対したけれど、そういうものの方が可能性があるでしょう?

現代の人から求められる新しいものにうまく昇華できるかということが、伝統工芸をこの先も受け継いでいくために必要なことです。そして、自分でやってみてそれは実現できることなんだって確信を持っています。もちろん僕が特別なのではなくて、やる気を持って継続すればきっと他の人にだってできることだと思っています。

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――国内外で活躍される西堀さんが考える、「Made in Japan」の強みとはどんなことですか?

繊細さ、手を抜かずに丁寧であること、わびさび、過剰な装飾を排したシンプルさ……。日本ならではの良さは沢山あって、それは伝統芸能から来ているものかもしれないし我々の生活から来ているものかもしれない。ただ、それらを海外に持っていった時に、文化としては受け入れられるけれど、実際にそのまま使えるかというとまた別問題だと思っています。例えば抹茶椀をそのままヨーロッパに持っていったとしても、抹茶椀に紅茶を入れて飲まないでしょう。もっと言うと日本の陶器の湯呑みにワインを入れて飲む、なんてことはあり得ない。日本とヨーロッパ、異なる2つの文化が重なるところを見つけて、そこで使えるものを提案することが大事です。日本の座敷で正座して、布団で寝る、なんていう文化をヨーロッパの人に押し付けようとしてもそれは無理なので、ヨーロッパの文化の中でどれだけ日本のエッセンスを入れつつ、オリジナリティのあるアイテムを提案できるか、ヨーロッパの人たちの生活に価値を提供し、受け入れられる形に変化できるかということが大事だと思っています。「Made in Japan」というだけで評価されるのではなくて、この商品いいね、どこで作られたものなのか? 日本、やっぱりさすがだね、という反応が海外では多いように思います。

 

――伝統は革新の連続というコンセプトをまさに実現し続ける西堀さん。最後に、今後西堀さんがやってみたいことを教えて下さい。

まずは来年に向けて「日吉屋」で新しい商品を出すこと。前の商品から3年が経っているので、日吉屋の経営者としても職人としても、これは絶対にやりたいです。

中長期的に考えているのは1人でも多くの職人や作り手の可能性を引き出して、伝統ってかっこいいんだということを伝えていきたいです。伝統工芸が「売れる」ということがすごく大事だと思っています。売れる、というのは価値をお金に換えること、お金を出してまで欲しいと思っていただけるモノやコトを創り出すことです。。

僕は10年以上前からずっと同じことを言っているのですが、根底にあるのは日本の文化がすごくかっこいいし、それは十分に世界に誇れるものだと思っています。だからそれを生業にして、日本人であることに誇りを持って、生活していける人たちを増やしたいと思っています。

ただ、全てを僕一人でやるのは不可能だから、職人としても、プロデュースやコンサルティングにしても後進を育てて行きたいですね。

それと、20年以上ずっと言っているのはクロアチアで寿司屋をやりたいです。カナダに留学中にクロアチア人の友達に出会ったのですが、当時クロアチアには日本食レストランがなかったんです。だから、寿司屋を出したいと思った。そのうち絶対やると思っています。人生で初めて持った夢だったので(笑)

 

…日本の伝統を守りつつも、常に進化させるという気概を持ち続ける西堀耕太郎氏。「日本ってかっこいい」と言い切り、「できないと言わない」と語る西堀氏の言葉は力強く、日本のものづくりが歴史を守りつつも新たな伝統を創り出していくであろうという期待を感じさせるものでした。やると決めたら必ず実現する強い思いを持つ西堀耕太郎氏、インタビューの最後に語ってくれたクロアチアで寿司屋がオープンする日は遠くないのかもしれません。

 

西堀耕太郎(にしぼり・こうたろう)

1974年、和歌山県新宮市生まれ。老舗京和傘工房「日吉屋」の5代目当主。「伝統は革新の連続である」を企業理念に掲げ、和傘の技術、構造を活かした新商品開発に積極的に取り組む。国内外のデザイナー、アーティスト、建築家達とのコラボレーションにも取り組み、和風照明「古都里-KOTORI-」シリーズを中心に現在世界約15カ国で展開。2012年より日本の伝統工芸や中小企業の海外向け商品開発や販路開拓を支援する株式会社TCI研究所の代表を務め、のべ約130社の日本企業の海外進出や商品開発を支援。2015年に前エルメスインターナショナル副社長・齋藤峰明氏が総合ディレクターを務め、フランス パリ市内マレ地区でオープンした、日本の職人技術の新たな可能性を発信するユニークなアトリエ「アトリエ・ブランマント(Atelier Blancs Manteaux)」の共同経営に参画。日本の伝統技術を生かした現代的な商品を提案すると同時に、海外デザイナーとの共同商品開発等も手掛ける。

 

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わとな WATONA *2017年6月14日(水)~9月24日(日)期間限定
東京都中央区日本橋室町1丁目5番5号 コレド室町3 3F
http://watona.co.jp/

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