ホテルオークラ 至福のおもてなし《第2話》

2017.11.18

ホテルオークラ 至福のおもてなし

《第2話》

1964年の東京五輪で生まれた、ホテルオークラの鉄板焼

 

オークラ2回 サザンカ メイン(フランベ)

ホテルオークラ東京 「鉄板焼 さざんか」のヘッドウェイター 坂水 春也はこの道 約20年のベテランである。客の目の前で炎が上がる「フランベ」の手捌きは大胆かつ軽妙で客を喜ばせる。

 

事が楽しみで日本に訪れる外国人は多いが、「鉄板焼」は不動の人気ジャンルの一つである。和牛をはじめ日本の良質な海の幸・山の幸を目の前で調理する、そのシズル感や醍醐味が、海外のお客様にはたまらないのだろう。鉄板焼は、寿司や天ぷらやうなぎのように、職人技が光る日本の伝統専門料理の一つになっている。今でこそ、鉄板焼を提供するホテルは数多いが、その先駆的存在がホテルオークラ東京の「鉄板焼 さざんか」である。ホテルオークラ(現・ホテルオークラ東京)に初めて鉄板焼が登場したのが、今から約50年前の1964年、東京オリンピックの年であった。

「海外からオリンピックにくる外国人に、日本の食文化の良さを味わってもらうにはどうしたらいいのだろうか?」

 東京オリンピック前年の1963年。当時、営業企画担当だった大崎磐夫(元・ホテルオークラ社長)は、新規のレストラン構想に向けて思案に明け暮れていた。ホテルオークラの飲食店は、開業当時から今でも外注ではなくてすべて社内で運営している。料理やメニュー開発はもちろん、運営体制もすべて自前で賄わなければならない。レストラン開発は経営全体の戦略が伴うだけに、その責任は大きかった。大崎にはひとつのアイデアが浮かんでは消えていた―――オリンピックをきっかけに訪日する外国人観光客を、日本の文化、慣習、料理でもてなしたい。

「鉄板焼のスタイルを、ホテルで出来ないだろうか?」日本には、海外に知られていない素晴らしい牛肉もある。それを、五輪のタイミングで提供すれば、きっと話題になるはずだ」

崎は、さっそく4台の鉄板を特注し、都内の有名鉄板焼店のシェフに、タレの調理法や鉄板焼の料理法などの教えを請うた。大崎が考えたアイデアは、和食のような献立の中でステーキを提供し、最後に締めのご飯と味噌汁を出す演出だった。しかも、メインのステーキも醤油ベースのタレを使い、和のテイストを表現したかった。

オークラ2回 サザンカ サブ 「さざんか」は1990年に和食レストランから独立し、現在はホテルオークラ東京3階で、個室を含めた4つの鉄板台の計38席で営業している。12名の専属の「焼き手」が鉄板焼の調理を担当。

 

メニュー開発や設備などのハード面はクリアできそうだったが、一つ大きな課題が残る。調理スタッフの育成だ。

 ホテルの調理は厨房で専門のスタッフが専念すればよかったが、鉄板焼は調理だけでなく同時に接客も行わなければならない。客の好みを洒脱な会話で引き出して調理に反映してこそ真のもてなしになる。そう大崎は考えたのだ。しかも、海外のお客と接客するには語学にも長けていなければならない。そこで大崎は調理スタッフではなく、客の対応に慣れたウェイターを調理人として採用することにした。その作戦は功を奏し、ホテルらしからぬ融通無碍なもてなしが受けられると高評価につながった。その伝統は今でも受け継がれ、鉄板焼担当は「焼き手」と呼ばれ、代々ウェイターから起用されている。

の後「さざんか」は、1990年に和食レストランから独立し、現在はホテルオークラ東京3階で、個室を含めた4つの鉄板台の計38席で営業している。伝統にのっとり、今でも12名の専属の「焼き手」が鉄板焼の調理を担当している。ヘッドウェイター 坂水 春也もその一人で、この道約20年のベテランである。客の目の前で炎が上がる「フランベ」の手捌きは大胆かつ軽妙で客を喜ばせる。「鉄板焼の調理の中で一番難しい」と自らが言う“ニンニクチップ”も、流暢な手つきで仕上げ、食欲を視覚からも刺激するのであった。

 

オークラ2回 サザンカ 料理カット

 薄切りにした最上級のリブロースを客の好みで焼き、大葉と長ネギ、ニンニクを巻いた逸品「うす切り リブロースさざんか風」は「さざんか」のスペシャリテとして、アラカルトメニューでも供されている。鉄板焼 さざんか 03-3505-6071

 

「さざんか」のスペシャリテは「うす切り リブロースさざんか風」である。

 薄切りにした最上級のリブロースを客の好みで焼き、大葉と長ネギ、ニンニクを巻いた逸品だ。「肉をさっぱり食べたい」という常連のお客様との会話から生まれて定番になった、と坂水。海外のゲストはもちろん、高齢の方や女性に特に人気が高い。これは、コースだけでなくアラカルトでも楽しむことができる。

て、「さざんか」は海外でも展開している。1978年にはホテル オークラ アムステルダムに出店。昨年はミシュランガイドのオランダ版で、鉄板焼としては欧州初の星を獲得した。世界でもその名を知られるようになった日本の“TEPPANYAKI”。そのもてなしを、どう進化させるのか。2019年開業予定のホテルオークラ東京新本館での期待もふくらむ。

 

 

 

 

文・中村孝則

写真・青木倫典

構成・藤野淑恵

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