齋藤峰明コラム第1回:プレミアムジャパンが考える「プレミアム」とは?<<後編>>

2017.10.21
pj_ikoma_banner_05a-01

作り手と使い手の価値観をマッチングさせる

日本の職人さんは工房にこもってしまい、世の中の動きがどうなっているかが分からないことが多いのではないでしょうか。もともと日本の伝統産業は分業制であったため、作り手と消費者の間に大きな溝があり、消費者が何を考えているのかを知る機会がなかったのでしょう。商品が売れたというのは分かるかもしれませんが、なぜ売れたかが分からない。もちろん売れない理由も分からないから、商品を変えることもしないわけです。それに比べて、フランスの職人はごく普通の生活者と言えます。エルメスでも、バッグを作っている職人は平均年齢が30代後半と若い。彼らは、時代の変化を敏感に感じながら働いているので、消費者のニーズもよく分かるのだと思います。作り手と使い手が同じ価値観を共有することが大事です。世の中は変わり続けていきます。日本のものつくりも常に革新的でなければなりません。先代から引き継いだ技術と精神を生かして新しいものを作ることこそが今、求められていると思います。

 

日本の伝統技術を生かした新しい商品を海外に

私はもうひとつの活動として、パリで「アトリエ・ブランマント」というギャラリーを運営しています。そこでは、日本の伝統技術を活かしたさまざまな分野の商品を展示販売しています。海外に日本の商品を紹介する時には、世界の人たちに商品のどの部分をアピールしていくのかを、しっかりと考える必要があります。私は長年の海外生活で得た経験を活かし、日本の技術と感性に根ざした商品をプロデュースしています。そしてどうしたら海外の人に受け入れられる商品になるかということを、職人さんたちにも伝えるようにしています。後継者のいない職人さんが多く、伝統の技術を持った人がどんどんいなくなっていくわけですから、今やらないと手遅れになってしまうと思うのです。

sub4     sub5
アトリエ・ブランマント 店舗


日本のものつくりが進むべき方向とは?

日本のものつくりを、まずは現代のライフスタイルに合わせるということが必要です。そしてものの価値がどこにあるのかを見極め、その価値を徹底して磨いていくことが大事です。また日本のものは技術力や機能性に長けているものが多いのは事実ですが、それだけをアピールするだけでなく、相手の価値観に訴え、心に響くものを作っていかなければなりません。これがブランディングです。特に、海外では人種や宗教も異なり価値観もさまざまです。日本の企業が世界に出て行く時には、グローバルな世界の価値観を知ることが不可欠です。

 

「プレミアムジャパン」でやっていきたいこと

このような私の経験を生かし、「プレミアムジャパン」では日本の素晴らしいもの・ことを日本国内だけではなく、海外へも発信していく予定です。海外に長く住んでいるからこそ、日本人としてのアイデンティティを強く感じますし、違った視点が見えてきます。最初の編集会議のときに“プレミアム”という言葉の意味を、みんなで考えました。それぞれ違った考え方があり、様々なディスカッションを経て、私たちが考える“プレミアム”を次のように定義しました。

プレミアムなもの、それは私たちの心に響く物語を持っています。プレミアムなものとの出会いは、新しいインスピレーションをもたらし、豊かな生活を育んでくれます。

 つまり“プレミアム=高価・ラグジュアリー”という意味ではなく、それを所有や経験することで、その人の生活が豊かになる、という考え方に落ち着いたのです。これは必ずしもコンテンツを制作したり、選択する場合のガイドラインではありませんが、編集部全員がこの考え方に基づいてサイトを運営して行く中で「プレミアムジャパン」のカラーが生まれていくと考えています。

 「プレミアムジャパン」は日本のプレミアムを求めさまざまな分野の情報を丁寧に取り上げ、世界への発信に努めていきます。

 

「齋藤峰明コラム第1回:プレミアムジャパンが考える「プレミアム」とは?<<前編>>」はこちら

01_saito

<プロフィール>

齋藤 峰明(さいとう・みねあき)

シーナリーインターナショナル代表 
1952年静岡県生まれ。高校卒業後渡仏。パリ第一(ソルボンヌ)大学芸術学部卒業。1975年フランス三越に入社。1992年、40歳の時にパリのエルメス本社に入社後、エルメスジャポン株式会社に赴任。営業本部長、専務取締役を経て、1998年より代表取締役社長として、日本でのエルメスの発展に尽くす。2008年外国人として初めて、エルメスパリ本社副社長に就任した。
2015年、エルメス社を退社後、シーナリーインターナショナルを設立。代表として、新コンセプトのフットウエアブランド「イグアナアイ」の紹介や、日本の伝統技術及びデザインアイテムを紹介するギャラリー「アトリエ・ブランマント」をパリにオープンするなど、パリと東京をベースに日本の新しいライフスタイルの創出と、世界への発信の活動を開始。ほかにライカカメラジャパン株式会社 取締役、パリ商工会議所日仏経済交流委員会 理事など。
1997年 フランス共和国 国家功労勲章シュヴァリエ 叙勲。

ATELIER BLANCS MANTEAUX (アトリエ・ブランマント)  http://www.abmparis.com/ja/latelier/#1