酒井ワイナリー バーダップ鳥上坂マスカットベリーA・ブラッククイーン2014「いますぐ飲みたい日本ワイン」vol.20 柳忠之

2016.03.02

 

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ろ過器を使わない自然清澄、ブドウ畑に羊を放して除草

一昨年、ワイン専門誌の取材で山形を訪問した際、とても興味をもったワイナリーが、山形県・赤湯温泉にある「酒井ワイナリー」です。

赤湯は1093年、源義家による奥州遠征の際、その弟義綱によって発見された温泉で、傷を負った家臣たちが湯に浸かり、湯が真っ赤に染まったことからこの名前がついたと伝えられています。酒井ワイナリーもその温泉街にあり、一見するとただのお土産屋さんにしか見えません。しかしこここそ、明治25年(1892年)に創業した山形県最古のワイナリーなのです。

明治13年に建てられた土壌を改装したという樽貯蔵庫を覗いてみると、そこでは酒井家のお母さんが一升瓶に一本一本手作業で蓋をしていました。このワイナリーではろ過器を使わず、一升瓶に移したワインが自然に清澄するのを待ちます。昔ならのちょっとしたこだわりです。

それからもうひとつ、ブドウ畑にもこだわりがあります。酒井ワイナリーのブドウ栽培、ワイン醸造を担うのは、まだ30代の酒井一平さん。自然を尊重したブドウ栽培を心がけ、化学肥料や除草剤の散布を止めました。では雑草をどのように処理しているのか? なんとブドウ畑に羊を放すのです。そうすると、羊たちがきれいに畝間の雑草を食んでくれます。しかも羊の糞はブドウの搾り滓と混ぜて堆肥に。まさに循環型農業ですね。

 

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