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七本鎗 純米 渡船:「気になる日本酒」 vol.20 あおい有紀

2016.03.06

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あの魯山人も愛飲した、歴史深い銘柄

琵琶湖の最北端に位置する滋賀県長浜市で、470年以上に渡り酒造りを続けている冨田酒造。天文3年(西暦1534年)頃創業の、全国でも屈指の歴史ある酒蔵で、旧北国街道沿いの風情ある街並みの一角にあります。銘柄「七本鎗」は、賤ケ岳の戦いで勇猛果敢に戦い、秀吉を勝利へ導いた七人の若武者、賤ヶ岳の七本槍に由来。あの北大路魯山人も湖北地域に逗留していた頃、この「七本鎗」を愛飲していたといいます。十二代目の冨田八郎忠明蔵とも交流があり、魯山人が書いた「七本鎗」「酒猶兵」の作品も残されていて、特に「七本鎗」は、現在のラベルデザインにも活かされています。

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第15代は、冨田泰伸専務(41)。京都産業大学経営学部卒業後、協和発酵に5年勤めたあと、アメリカの市場、フランスのワイナリーやスコットランドの蒸留所、スペインなどを1年ほどかけて巡り帰国。2002年に蔵に入り、酒類総合研究所や滋賀県の他蔵で酒造りを学びました。姉・兄の三人兄弟で、幼い頃から身近に酒造りがあり、将来継ぐかもと少しは意識していたものの、農業大学へ進むわけでもなく、他の進路を考えるなど漠然としたなかで兄が公務員になったこともあり、タイミングも合って蔵を継ぐことになりました。

2009年からは醸造責任者として酒造りに携わる冨田専務。現在850石で7名での造りですが、大変なことは、毎日朝から晩まで働く人を使い、輪を保つ事。生き物が相手なので、人の都合で作業をずらすこともできず、危険な環境で丁寧さも必要な現場は気が抜けません。夜など作業をしていない時も発酵は四六時中続いており、常に抱えているプレッシャーと戦いながらも、「七本鎗という武将のイメージにそぐうような、太く、力強く、キレのある酒」を目指して、日々切磋琢磨しています。

 

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