グルメ

目白台 日本料理 辻:「食の王道」vol.23 広川道助

2016.04.21

 

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食べログにはレビューもないのに大満足
「日本料理 辻」にみる東京の洒落

偶然とは恐ろしいもので、長いこと食の分野にかかわっていると、「この店がこんなところで繋がっていたのか」と驚くことがしばしばあります。

目白台「日本料理 辻」にはじめてうかがったときもそう。実際に店の前に立った時、それが以前、ずいぶん頻繁に通った寿司屋の居抜きであることに気付いたのです。

そもそも、この店を知ったきっかけも偶然のようなもの。知り合いの店の主人から「以前、修業先の後輩が店を出しまして」とは聞いていたものの忘れていたのですが、定期的に美味しそうな食材や料理を上げているFacebookページがあり、「あのとき聞いた名前だ」と思い出したのです。

店主の辻さんはいくつかの割烹で修業後、2012年に30代でこの店を開きました。店は6席ほどのカウンターだけ。私が知っている寿司屋のころから内装はほとんど変わらず、変わったのは、当時は奥の小上がりも使っていましたが、いまは閉鎖していることくらいでしょうか。

椿山荘から近いところにあるので、宿泊客が紹介で流れてきているようですが、目白駅からも、雑司ヶ谷、江戸川橋駅からも中途半端な場所で、近所の客以外は入りにくい場所にあります。

食べログには、情報は出ているもののレビューは出ていない、もちろん点数はついていない、という店なのですが、いつ行っても水準以上の料理を出してくれるのが、この店の愛すべきところです。ネットには、誰もが誉めそやす店を数多く訪れて、勲章の数を公開しているグルメな人々は星の数ほど見つけられますが、静かに佇んでいる店のなかに輝く「玉」を見つけだすことも、これまた食の世界の楽しみというものです。

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先日の「弥生の料理」では、菜の花とホタルイカの辛子酢味噌、ワラビの土佐和え、蕗の信田巻きという前菜からスタートしました。お椀は筍と若布、そして季節の刺身。こう書くときわめてオーソドックスな料理ですが、それがメリハリをもって出されるので、次の料理がとても待ち遠しく思えるのです。 

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