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天寶一 千本錦純米酒 華風車(かざぐるま):「気になる日本酒」 vol.27 あおい有紀

2016.05.10

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「今期はかなり納得した酒を醸せたので、天寶一をもう一度、しっかり伝えてブランディング化していきたいと思ってるんです」

第5代蔵元の村上康久社長(49)は、これまでも確固たる信念のもとに、納得のいく酒造りをされていると思っていましたが、今回はなんだかいつもに増して気合の入り方が違う…。そう感じた私は、都内某所で天寶一の新酒を頂きながら、その理由を伺うことにしました。

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株式会社天寶一の前に立つ村上康久社長

広島県福山市にある、1910年創業の株式会社天寶一。天寶一は、「天地唯一の宝」という意味合いが込められています。村上社長は国士舘大学卒業後、建築資材会社で5年間営業として働いたのち、29歳の時に広島の醸造研究所で造りを3ヶ月学びました。

醸造研究所の同期は、日本酒ファンなら誰もが知る、日高見の平井社長、天狗舞の車多社長、貴の永山社長、喜久酔の青島社長、白岳仙の安本社長など、錚々たる顔ぶれ。当時、日本酒業界に一石を投じた「十四代」の日本酒を平井社長が手に入れたとのことで皆で飲んだ時、これまでにない洗練された味わいに衝撃を受けたそう。その時の体験、また同期の蔵元から受ける刺激は、今の天寶一の酒造りにも大きな影響を与えているといいます。

村上社長が蔵に戻ってから20年の月日が流れましたが、蔵を継いだ当初は、なんとなく蔵に戻り、どんな酒を造りたいかなど具体的には考えていませんでした。売れる酒を造ればいいと、当時流行りだった華やかな香りの日本酒を造っていたところから、ある時期、自身の好きな酒を造りたいと、食中酒として飲み飽きしない酒造りにシフトしました。

「その時々で悩み、暗闇でもがきながら天寶一の酒とは何かを考えて、杜氏と二人三脚で造ってきましたが、これまで頭の片隅では、二流でもいい、そんな思いもあったかもしれません。でも、二流も三流も同じなんですよね。食中酒としてのトップクラスを狙わないといけないと気づきました。これまでの天寶一は、甘みが少なく固さがあったので、熱燗にすると美味しい、とよく言われていましたが、それは正直私が目指している酒ではなかったんです」

 

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