グルメ

蒼空 夏純米7号生酒:「気になる日本酒」 vol.32 あおい有紀

2016.06.21

 

京都・伏見で一番小さいながら
丁寧な酒造りが信条の酒蔵

rd850_-1

「7年間のブランクを経て酒造りを再開した蔵だからこそ、できることがあると思うんです」そう語るのは、蒼空を醸す5代蔵元の藤岡正章社長(47)。京都市伏見区にある藤岡酒造は、明治35年創業。初代藤岡栄太郎により、創業時は京都市東山区にて「万長」という銘柄で酒造りを始めました。その後滋賀県大津市にも蔵を建て、2蔵体制で最盛期には8000石もの生産量があったことも。大正7年に現在の場所に蔵を移し、比叡山からの伏流水、中硬水の白菊水を地下100メートルから汲み上げ、仕込み水として使用しています。

rd850_-2

藤岡社長は、酒蔵を継ぐつもりで東京農業大学を卒業し、広島の醸造研究所で研究をしていましたが、蔵に戻る前の平成6年、3代目である父の藤岡義文氏が急死。その頃も3000石の生産量があり、母親が跡を継ぎますが、翌年発生した阪神大震災での被害が追い打ちとなり、苦渋の選択で平成8年に蔵を閉じることとなりました。藤岡社長は、東京にある酒問屋で働き出しましたが、ちょうどその頃、時を同じくして高木顕統社長が造る、銘酒十四代が注目を集め、蔵元自らが杜氏として酒を造る、蔵元杜氏のスタイルが浸透していきました。同世代の蔵元達が活躍している姿を見ていて、「父親が生きていたら、今頃自分も皆と同じように酒造りをしていたのだろうな…」そんな思いが、頭から離れなかったといいます。

rd850_-2-a rd850_-2-b

酒蔵に生まれた以上、やはり酒造りをしたい、と強く思った藤岡社長は、満寿泉や日高見など各地の酒蔵で仕込みの勉強をしながら、造りを終えると京都に戻り、3年ほどかけて少しずつ再開の準備を進め、平成14年、満を持して造りを始動。この再開への気持ちを後押ししてくれたのは、平成7年、最後の1年だけ蔵に来てくれた但馬杜氏が造った酒。それまでの万長の酒は全国新酒鑑評会用の出品酒をメインに全力を注いでいましたが、最後の年に造った酒は、出品酒だけでなく全てが美味しい味わいだったことに衝撃を受けます。

「この蔵は、杜氏さえしっかりしていれば美味しい酒が造れる蔵なんだ」

この酒と出会っていなければ、自分の蔵にそこまで自信が持てず、再開できたかも分からない、と。あの衝撃を超える酒を造りたい!今でもそれが藤岡社長の原動力になっているといいます。

次ページ《蔵元自身がイメージする「蒼空」を目指して

Area