野じま:「食の王道」vol.33 広川道助

2016.06.30

地味だが、たしかな常連に支えられている
銀座の鮨「野じま」の握りの品格

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寿司職人にとって「銀座」は特別な響きを持つ場所のようです。

いまはロンドンで成功した寿司「あら輝」の荒木水都弘さんは、用賀で人気を得て銀座に移りましたが「用賀でやっていた頃は、自分はわざわざここまで来てくれる人を大切にすると強がっていましたが、正直にいうと、当時は銀座でやるだけの勇気がなかったんですよね」と話していました。その後、満を持して銀座に移転、ミシュランの三つ星を獲得し、ロンドンでも人気寿司店になったことは、寿司好きには有名な話です。

「野じま」の主人、野島郁さんも、銀座での修業ののち、最初は西麻布で4年ほど営業していましたが、銀座への思いを絶ちがたく、2011年にあらためて銀座に店を出したのです。

7丁目の小路を入ったところにある、小さな雑居ビルの地下1階。1階に予約がほとんど不可能なステーキ「かわむら」があるビルといえば、「ははん」とうなずく向きもあるでしょう。

しかし、銀座には若くして独立し、瞬く間に人気寿司店になったところも数多い中、野じまはあまり、寿司マニアの口の端にはのぼらない店といっていいでしょう。

たぶん、同業者の横のネットワークをうまく使ったり、SNS好きの寿司フリークに取り入ったりといったことが、あまり上手ではない性分だからなのだと思います。しかし、たしかな常連に支えられています。

 店はカウンター6席だけ。瓶ビールを一杯飲んでいると、季節の肴が数品出てきます。口にすれば上等なものだとわかりますが、飾り気はなく、見た目は地味な皿がほとんどです。いまの季節だと星かれいあたりからスタートするのが常道でしょうか。

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