寛幸:「食の王道」vol.34 広川道助

2016.07.07

「晴山」で培った技術で作る「新・家庭料理」を
深夜まで楽しめる異色の割烹

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いまの東京はパリ以上に「美食の都」だといわれますが、こんな店が銀座の片隅にあることを知ると、たしかにそう思わざるを得ません。

三田の日本料理「晴山」といえば、予約が取れない人気料理店。岐阜の割烹「たか田八祥」で修業をした山本晴彦さんが東京に開店、わずか2年でミシュラン二つ星を取ったという実力店ですが、そこで二番手を務めていた佐藤寛幸さんが独立して構えたのが、銀座「寛幸」です。

「たか田八祥」自体、店主の高田さんの繰り出す創作料理で有名で、それを継承した弟子の山本さんは、東京の客のニーズに合ったかたちで、あわびうどんやじゃがいも饅頭など、見た目楽しく、食べて美味しい料理を開発しました。

そこで料理長の側近を務めていたのが佐藤さん。同じように「たか田八祥」で修業し、山本さんに誘われて晴山に移った佐藤さんだけに、自身の店にはどんなテイストを加えるのかがとても楽しみでした。

カウンター6席とテーブルがひとつのこじんまりとした店で、すべてを佐藤さんがひとりで差配しています。

23時まではコースだけですが、閉店時間はなんと午前3時。遅い時間はアラカルトも楽しめるという仕組みで、晴山とはまったくコンセプトが違います。

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なにしろ、見せてもらったアラカルトのメニューが楽しそうなのです。「飛騨牛のハンバーグ」や「すっぽん雑炊」に混じって、「名古屋コーチン」「味噌かつ丼」など、愛知県生まれの佐藤さんらしい、中部地方の料理が並びます。「鶏ちゃん」や「美濃けんとん」といった聞きなれないご当地料理まであるのには驚きました。

早い時間のコースもアラカルトの料理をうまく取り入れながら、その日の入荷食材で組み立てています。

まず、面白かったのが「すっぽんのスープ」です。

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ロシア料理で見かけるような、スープの上面がパイで覆われている料理で、それを崩すと、途端にすっぽんの甘い香りが立ち上がってきます。

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なかにはエンペラや首などすっぽんの部位が無造作に入っているのですが、それがたまらなく美味しい。パイを崩し、香りを楽しみ、味わって微笑むという、佐藤さんの見事な策略です。

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