グルメ

ドメイヌ・タケダ ベリーA古木2013:「いますぐ飲みたい日本ワイン」 vol. 37 柳 忠之

2016.07.13

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古木のブドウから生まれる熟練の味

ワイン用語に「ヴィエイユ・ヴィーニュ」というフランス語があります。英語でオールド・ヴァイン、日本語に訳すなら古木です。

ブドウは多年生植物ですから、一度植えると何年も生き続け、毎年秋になると実をつけます。オーストラリアには樹齢170年といわれるシラーズの樹があり、いまだに実をつけているそうです。植樹は1847年とのことですから、日本は江戸時代。黒船来航の6年前ですね。

わざわざヴィエイユ・ヴィーニュや古木と謳うのは、樹齢の高いブドウに何か特別な力があるからです。植えたばかりの若い樹は、樹体を大きくすることにエネルギーを使います。しかも勢い余ってたくさんの実をつけようとするので、ひと房ごとの凝縮度が薄まってしまいます。

一方、ブドウは年をとると、残されたエネルギーを子孫繁栄のために使おうとします。ところが若いときのような活力がありませんから、一本の幹につける房の数はぐっと減ります。その分、ひと房あたりの凝縮度は若木の比ではありません。

人間も年をとると、若いときのようにバリバリ働くことはできなくなりますが、仕事に熟練の味が滲み出てきます。ブドウの樹も同じなんです。

大ぶりのグラスで飲みたい樹齢70年のベーリーA

さて、本日ご紹介のワインは、山形のタケダワイナリーが造る「ベリーA古木」。その名のとおり、樹齢70年という古木のマスカット・ベーリーAを醸した赤ワインです。

先の170年のシラーと比べたら70年は若そうに思えますが、世界的に見てもかなりの古木。古木と呼ぶ明確な基準があるわけではないので、世の中にはたった20年でもラベルに古木と謳ってしまうメーカーさえあります。とくに本格的にワインを造り始めて歴史の浅い日本で、70年という樹齢は驚異的です。

このベーリーAの樹は現当主・岸平典子さんの祖父・武田重三郎さんが植えたもの。培養酵母を用いず、自生酵母による自然発酵を行い、酸味を柔らげる乳酸発酵もバクテリアを使わず、空気中の乳酸菌によって自然に引き起こされます。それをオーク樽で12ヶ月間熟成させました。

マスカット・ベーリーAといったらイチゴドロップのような甘い香りが真っ先に思い浮かびますが、このワインはそこが違います。より複雑で土っぽく、ブラインドで試飲したらカベルネ・フランとか言ってしまいそう。

開けたての時は少々暴れていましたが、冷蔵庫で二日目に落ち着きを見せてきたのも特筆すべき点かもしれません。大ぶりのグラスで、たっぷり呼吸させながらお飲みになられたほうが本領を発揮するようです。ぜひお試しを。

 

3780円(税込)現在、2014年が発売中/タケダワイナリーhttp://www.takeda-wine.co.jp/

取材・文/柳 忠之

 

【柳忠之の〈いますぐ飲みたい日本ワイン〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/tadayuki-yanagi/

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