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「心米」の土鍋炊きごはん:「お米が主役」 vol.39 柏木智帆

2016.08.02

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6種類のお米から選ぶ土鍋炊きごはん

東京・白金高輪の和食店「心米」。洗練された佇まいの店に入ると、檜の一枚板のカウンターが目を引きます。

品書きを開くと、最初のページに書かれているのは、前菜ではなく、お米。店名や、引き戸に施された稲穂のマークからも、お米に対する思いが熱烈に伝わってきます。

お米は、店主の吉田政紀さんが吟味して選び、時期によって入れ替えながら常時6種類をそろえています。

7月中旬には、こんなお米に出会いました。

一.「山形県東置賜郡 浦田さんの さわのはな」

二.「京都府京丹後市 田中さんの ミルキークイーン」

三.「岡山県倉敷市 木村式自然栽培米 朝日」

四.「山形県高畠町 遠藤さんの特別栽培米 コシヒカリ」

五.「岐阜県大垣市 匠の米 ハツシモ」

六.「宮城県登米市 鈴木さんの特別栽培米 たきたて」

「お客さまは知っている品種のお米よりも、知らない品種のお米を食べてみたいとおっしゃります。でも、たとえば同じコシヒカリでも、生産者によってその味わいはまったく違うのです」と、吉田さん。同じ産地、同じ品種であっても、生産者によって、その味わいや食感はまったく別物になるのだと言います。

お米は、いずれも1合炊きの土鍋で0.7合ずつ炊き上げてくれるため、食べ比べをすると、お米の食感や味わいの違いを楽しめます。時期によってお米のラインナップが変わり、日本酒も時期によってラインナップを変わる。お米好きにはたまらない、何度も訪れたくなるお店です。

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食べ比べを楽しみ ごはんのおともと楽しむ

今回は、「一 さわのはな」「四 コシヒカリ」「六 たきたて」の3種を注文。

「一、四、六と、数字の順番に食べていくと、違いがわかりやすいですよ」と教えてくれたのは、おかみの安斎麗奈さん。鮨屋でさっぱりとした白身から、こってりとしたトロへ流れていくように、あっさりからもっちりへと移行していく趣向です。

その順番通りに、まずは「さわのはな」。舌触りが滑らかで、喉越しがよく、優しい味。いくらでも食べられそうな軽やかさです。次に食べた「コシヒカリ」は、しっかりとした弾力で、旨みと甘みが十分。粒感が際立ち、しゃっきり硬派なお米です。そして、最後に食べたお米は、低アミロース米で知られるミルキークイーンよりも「味がしっかりとしている」と吉田さんが評する「たきたて」。炊きあがりの輝きはピカイチ。糯米のような風味のある柔らかなお米だと感じた1杯目。2杯目は、お米の水分が飛ぶことで、柔らかさの中に程よい弾力も加わり、少し冷めると味わいが増しました。

ごはんのおともは、削りたての本枯れ節おかか、糠漬け、有明海産の一特等級焼き海苔、大分県矢野農園の梅干しを注文。ごはんだけで食べても十分おいしいですが、ごはんのおともを添えると、箸が止まらなくなります。

セロリやキュウリなど爽やかな風味と旨みを醸し出す糠漬け。フルーティーで香り高く、ごはんの甘みを驚くほど引き出す梅干し。目の前で削られた鰹節をほかほかごはんにふわりと乗せ、再仕込み醤油をたらり。焼き海苔は濃口醤油にちょんと浸けて。幸せなひとときを演出してくれます。

食べきれないごはんは、塩むすびにしてもらってお持ち帰り。小さくふうわりとむすばれた可愛らしいおむすびです。翌日の朝食に食べようと、持ち帰りの塩むすび用に土鍋ごはんを注文する客もいます。

違う種類のごはん。同じお米の1杯目と2杯目の違い。店で食べるごはんと、持ち帰りの塩むすびの違い。さまざまなお米の表情に出会えます。

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