【東京 元麻布】かんだ :「食の王道」vol.40 広川道助

2016.08.18

この人の料理を食べたいという思いで
元麻布の割烹「かんだ」を訪れる喜び

ミシュラン東京版が出来て以来ずっと三つ星を堅持している元麻布の割烹「かんだ」が7月末に重大な発表をしました。

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ASATSUYU等のワインで知られるワインメーカー「ケンゾーエステーツ」とコラボをして、ナパバレーに日本料理店を作るというのです。場所はダウンタウンで、11月下旬オープン予定です。

補足するように、「かんだ」主人の神田裕行さんは自身のフェイスブックで「これからは年22週間ずつ、つまり一年のうちの1カ月ほどをナパバレーで料理を作る予定です(中略)元麻布かんだはその間閉めます」と記したました。

この文章を読んで私は「神田さんらしい、思い切った決断だなあ」と思いました。

いまどき海外に支店を作る料理店は数多くありますし、店主が年に二回、技術指導に行くことも珍しくありません。しかし、店主が日本を離れているあいだ、店を閉めるのはかなりの英断だと思ったからです。

たいていの店はそのあいだ、二番手の弟子がかわりに仕事をします。そのことが、若手にとって大いなる勉強の場になるという考えも十分、理解できます。だから私は多店舗展開が悪いと思っているわけではないのです。

しかし、神田さんは、自分の料理を食べに来てくれる人には自分で作ったものを出す、という考えを貫き、その間はスタッフ全員で渡米するという。この潔い考え方こそ神田さんだなと思ったのと、最近の彼の料理にはそのスピリットが現れていると感じたのです。

それなりに定期的に「かんだ」は訪れているつもりですが、ミシュランで三つ星を獲得してから数年は、総花的であまり印象に残る料理を食べた記憶がありません。

しかしここ数年、周囲の食いしん坊たちのあいだから「かんださんの料理、いいよね」という声が、数多く聞かれてきました。

確かにかんださんの料理はとてもよくなったと思います。特にお椀がいい。椀は日本料理の華といわれますが、その加減がなによりも素晴らしいのです。

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