「球(きゅう)」:「気になる日本酒」番外焼酎編 vol.38 あおい有紀

2016.08.23

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©sono(bean)

9月6日から始まる、黒木本店の新たな挑戦

「焼酎の良さは気軽さにあると思うんです。リラックスして楽しめるのがいいですよね。焼酎は造るのも飲むのも好き。蔵に帰ってきてまだ4年ですが、天職だと感じています」そう語るのは、黒木本店の黒木信作専務(28)。宮崎県児湯郡高鍋町で、1885年(明治18年)創業、四代当主 黒木敏之氏の次男として、現在黒木本店の専務取締役、そして尾鈴山蒸留所の代表を務め、酒質設計から現場監督、品質管理まで担当しています。黒木本店では、百年の孤独、中々、㐂六(きろく)、野うさぎの走り、など焼酎ファンにはたまらない人気銘柄を多く手掛けてきました。

rd850_2©福田栄美子

今でこそ焼酎に携わることが天職だと言い切る黒木専務ですが、始めに興味を持ったお酒は、焼酎ではなくワインでした。明治大学商学部に通いながら、アルバイトしていたレストランで飲ませてもらったワインがあまりに美味しく、開眼。卒業後、ワインのインポーターやソムリエの仕事も面白いかと思い、フランスへ渡ります。

語学学校に2ヶ月通った後、ワイナリーでぶどうの収穫を手伝ったりと憧れの土地でワイン研修を受けられることにテンションが上がったそう。でも、ワイナリーの造り手から、「こんな田舎のどこがいいの?」そう言われた時に、ふと自分の酒蔵も同じだな…と気づきます。「ワインそのものに憧れたというより、その土地の風土、文化、歴史など、脈々と受け継がれるものに惹かれていたんだと思います。そう考えた時に、自分のふるさとで焼酎に情熱を注ぎ、その作品を、どうだ!と見せるほうが楽しいのではと。自分が一生かけてやる価値のある仕事ってこういうことなのかもな…と思うようになったんです」

rd850_3©福田栄美子

日本に帰国後、それでも外で働いてみたいという思いがあり、東広島にある酒類総合研究所で3ヶ月間酒造りを学んだあと、東京のワイン商社に就職が決まりました。しかし、入社前に焼酎造りを手伝ううちに、ワインを勉強した時に身についたテイスティング能力が活かされたりと酒造りが楽しくなり、ちょうど父である黒木社長も60歳になるタイミングで、「酒造り、向いてるんじゃないか。お前がやったほうがいいよ」と社長に言われたこともあり、商社に就職せず、そのまま蔵に残ることとなりました。

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