田村 純米吟醸:「気になる日本酒」vol.41 あおい有紀

2016.09.23

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農業から酒造りまで、地域に根ざした循環型の酒造り

「まさに田んぼの広がる村なので、田村町。この地で、美しい田んぼを守る酒蔵でありたいと思っています」と言うのは、福島県郡山郡田村町にある、金寶酒造仁井田本家の十八代蔵元、仁井田穏彦社長(51)。創業1711年(正徳元年)創業、山と田んぼに囲まれた場所で、300年以上の歴史を持つ老舗蔵です。

rd850_2 rd850_2a先代から無農薬米で自然酒を造っていましたが、美しい田んぼをどう守り、次世代に繋げていくかを考え、2009年4月に農業生産法人 仁井田本家あぐりを設立。9月には有機JAS認定を取得し、「田村町自然の里計画」が始動しました。循環型の田んぼを目指し、有機肥料を使わず、稲わら・もみ殻・畔の草といった、田んぼから採れたものだけを田んぼに返す「無肥料自然栽培」を行っています。

rd850_3蔵人や同じ想いを持った地域の仲間と一緒に、自社田、そして契約栽培で、五百万石、夢の香、美山錦、一本〆、コシヒカリ、もち米などの米作りに力を入れるように。現在は、全生産量の70%が福島産のお米を原料に使用していますが、2025年までに、蔵から半径1km圏内60町歩の田んぼ全てを自然田にすることが目標です。

生産量1300石あるお酒全てが、全量無農薬米を使用した純米酒となった2011年、東日本大震災が発生。風評被害で出荷量が減るなど大変な苦労もありましたが、5年間の努力が実り、今年ようやく前年の出荷量を上回るまでになりました。震災をきっかけに風評被害払拭のために、蔵に来てもらうことを一番にと考えた仁井田社長は、蔵でのイベントを毎月のように開催するように。以前蔵人の宿直所だった場所をギャラリーに改装。お酒を搾る槽の横板をテーブル代わりにし、作家の作品を展示しています。

rd850_4また、小麦、あずき、瓜なども自然栽培し、それを原料に蔵スイーツを作り、毎月第4土曜日に蔵で販売。原料から全て自分達の手づくりで提供しています。発酵食品にも力を入れていて、米麹の甘酒のみで作ったこうじチョコや、蔵の乳酸菌で造ったマイグルトなども人気です。

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「お酒に興味のない方やお子さん連れにも来てもらい、田んぼを見て、安心安全だと感じてもらえれば。多くの方にリピートして頂けるような、魅力ある酒蔵造りを目指しています」と仁井田社長。

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他にも、田んぼの学校を創設し、自然栽培の田植え、稲刈り、草取り、酒仕込み、打ち上げ、と一年通して活動をしたり、春と秋の「蔵・感謝祭」と年2回大きなイベントも企画。オーガニックマルシェを開催し、県内の方中心に毎回3000人ほどの方が参加しています。「自然栽培や有機栽培で頑張っている農家ほど、今でも風評被害がひどく、米、野菜が売れないんですね。震災をきっかけに、福島のそういった農家さんとの繋がりができましたし、少しでも彼らの作る農産物を知って頂く機会になれば。田村町は震災の年から放射線量が低く、その年から米の作付けが可能な状況でしたし、現在も放射能検査を、玄米、白米、水、酒、酒粕と徹底的に分析していますが、全く問題ありません」と仁井田社長。

今年も9月25日(日)に収穫祭が開催されますので、ご都合つく方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。酒蔵のトレードマークでもある、カエルのTシャツを着た22名の蔵人が出迎えてくださいますよ!

 

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