グルメ

【東京 荒木町】津之守坂 小柴:「食の王道」vol.52 広川道助

2016.11.10

ふっくら美味しい炭火焼と割烹料理
新星「津之守坂 小柴」に化ける予感を感じます

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会食を終え、腹ごなしにと、駅まで津之守坂の夜道をふらりと散歩していたら、見慣れたビルの二階にたくさんの胡蝶蘭が置かれていました。

「新規開店か。どんな店だろう」

と思って、二階まで上がってみたら、カウンターの奥で忙しそうに仕事をしている主人の顔が見えました。かつては寿司屋だったところでしょうか。

それが、「津之守坂 小柴」との出会いでした。

荒木町は、もう少し四谷三丁目寄りの「車力門通り」と「杉大門通り」に飲食店が並びますが、さすがに飽和状態で、ここ数年津之守坂のあたりにも魅力的な店が出来てきました。

この店があるビルにもいくつかの飲食店があり、隣のビストロは深夜まで営業しています。フレンチ好きの友人によれば、値段と味のバランスが都内でもトップレベルとのこと。個人的体験では、うまい店の近所にはうまい店が集まるというものです(神田「藪蕎麦」の近くに「まつや」があるが如く)。

そこでなんとなく気になって、時をおかずに訪ねてみたのです。やはり、9月に開店したばかりの店でした。

カウンター8席と、4人掛けテーブル1席。ご主人の小柴武さんと若い料理人のふたりがきびきびと働いています。

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付きだしのあとに、色とりどりの八寸が登場するのは最近の流行りみたいなものですが、レンコンや鶏レバー、枝豆、小芋などで、高級な食材を使わずに料理で目も口も楽しませてくれるあたり、小柴さんの技量を感じます。

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お椀は、松笠茸という中華ではポピュラーですが、日本料理ではめったに出てこない食材を海老しんじょうと合わせています。若手にしてはお椀の吸い地は薄味で、松笠茸の食感を引き立ててくれます。

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刺身をいただいたあとに、やおら小柴さんが取り出した木箱のなかには、カマスやマナガツオ、すっぽんなどが入っていました。

「お好きなものを選んでください。のちほど炭火焼にいたします」

なるほど、これは面白い趣向です。決めかねていたら、「二品選んでもいいですよ」と声をかけてくれるあたり、若いのに客心理をつかんでいます。

マナガツオを選ぶと、串を刺し、塩を振って、壁に置かれた炭火の焼台で焼き始めます。新鮮なものは刺身にしてもうまい魚ですが、やはり、味噌に漬けて焼くのがこの魚の一番の味わい方だと思います。それだけに技量が問われる料理です。

 

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