岩の原ワイン・ブラック・クイーン2014:ワインキュレーター 柳 忠之

2016.12.08

20161208

”漆黒の女王”と名付けられたブドウ品種

日本固有のブドウ品種に、ブラック・クイーンという赤ワイン用の品種があります。「漆黒の女王」。名前がすごいですね。

日本固有といっても日本に自生していた品種ではなく、日本の厳しい環境でも適応できるように開発された品種です。生みの親は日本におけるワイン用ブドウの父、川上善兵衛。はい、マスカット・ベーリーAを作り出した人物ですね。1940年の学会で善兵衛が発表した改良品種は22もあるそうです。

ブラック・クイーンもマスカット・ベーリーAと同じく1927年(昭和2年)に誕生しました。ベーリー♀とゴールデンクイーン♂を掛け合わせた品種です。ベーリーが北米系のラブルスカ種、ゴールデンクイーンが欧州系のヴィニフェラ種なので、交配ではなく交雑種ということになります。ちなみにマスカット・ベーリーAの場合、母親は同じくベーリー、父親はマスカット・ハンブルグなので、このふたつの品種は異父兄弟。

一般的に北米系の品種は病気に強い反面、フォクシーフレーバーと呼ばれる独特の香りがあるため、ワイン醸造用としては敬遠される傾向にあります。反対に、欧州系の品種はワイン用に最適ですが病気に弱く、とくに湿潤な日本の環境では栽培に気を使います。そこで両者の良いとこ取りをした品種がマスカット・ベーリーAであり、ブラック・クイーンなのですね。

エレガントさの中にパワフルさが垣間見れる

さて、このブラック・クイーンは善兵衛ゆかりの「岩の原葡萄園」産。岩の原葡萄園は新潟県上越市にあるワイナリーで、1890年(明治23年)、善兵衛が自宅の庭先にブドウを植えたことに始まります。

自社畑で栽培されたブラック・クイーンをオークの樽で熟成させたこのワイン。ブラック・クイーンといえば、色の濃さと強い酸味が特徴ですが、たしかに色は深みのある赤紫がかったガーネット。一方、酸味はというと、オーク樽による熟成の効果でしょうか、いい按配にまろやかでエレガント。オークのニュアンスもほどほどで、果実のポテンシャルとうまく調和しており、ワインに骨格とスパイシーさを与えています。

エレガントさの中にパワフルさを秘めた、ブラック・クイーンの名にふさわしいワイン。生姜を使った牛肉のしぐれ煮に合いそうです。

4,320円(税込)/岩の原葡萄園 http://www.iwanohara.sgn.ne.jp/index.html

 

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