ウミヘビってどんな味? 琉球料理の最高峰「イラブー料理」を食す

2016.12.24

(1)rd1700_MIM_0010

琉球王国時代の宮廷でも供された歴史ある料理

その地方、その街に、「わざわざ出かけてでも食べたい」日本の味をご紹介する連載がスタートします。

第1回目にご紹介するのは、沖縄フリークでも実際に食べたことがある人は少ない「イラブー料理」。イラブー汁とも呼ばれるこちらは、温かい煮込み料理です。汁の入ったお椀の頂上には、迫力たっぷりの黒い肉片が鎮座していますが、これがイラブー。エラブウミヘビのことです。

ウミヘビと聞くとぎょっとする方も多いかとは思いますが、沖縄でイラブー料理は身体を労る汁ものとして広く知られ、かつては「夏と冬の2回、必ず飲んだ」という家庭もあったほど。元々は琉球王国時代の宮廷料理で、国賓をもてなす際にも提供された接待料理でもありました。ただし沖縄は昔、エリアによって食生活が随分異なっていましたし、現在でも食べたことのない人が多いのも事実です。

rd1700_MIM_0009写真(上)/ こちらは、イラブー汁を中心にコンパクトに「カナ」の魅力を楽しめる「イラブー定食」3,800円。

スープを飲むと、塩味にほんのりとだけ醬油味がし、かつお出汁と豚出汁のうま味がふわーっと口中に拡がります。その奥から、さらに今まで食べたことがないタイプのコクとうま味が顔を出しますが、これこそがイラブーの味。

うま味にうま味をさらに重ねているので飲み始めは濃厚に感じますが、最後まで飲み干しても、まったく、くさみもくどさもありません。イラブー自体は、炊いた身欠きニシンを連想させる食感で、ほろりとすぐにほぐれ、さっぱりとしています。

イラブ―は天然由来の滋養強壮剤、スーパーフード

このイラブーは、約200年前に国王のお抱え医者が書いた食療法書『御膳本草』の中で、身体にエネルギーを与え、婦人科系の病気などに効果があると書かれています。つまりは天然由来の滋養強壮剤。女性には特に嬉しい、スーパーフードと言えます。

(2)rd1700FF1148935B9B写真(上)/ 第一牧志公設市場で売られている、イラブー。棒状のものと、写真のような保存しやすさを優先して巻いたものとがある。「栄養素が多く、疲労回復や万病に効用がある」との説明書きが添えられている。

イラブーの産地は、久高島や八重山諸島が有名。捕獲後は乾燥させ、燻製にして保存します。そのため乾イラブーの見た目は真っ黒で、姿はカチカチに。切るにはノコギリが必要なほどで、これをまた戻して使うわけです。

人により、店により多少の違いはありますが、基本の作り方はこんな感じです。乾イラブーの皮目を火で炙り、熱湯と米ぬかを使ってたわしで表面を洗い、それをアクを取りながら6〜7時間、コトコト煮込む。これを濾したものが、下写真左の、イラブーシンジと呼ばれる煎じ汁です。

イラブーシンジに豚だしやかつおだしを加え、丁寧に下処理してさらに煮込んだ豚足や昆布を加えたものが、イラブー料理。完成までに数日かかるので、かつては料理にかける手間や時間を惜しまなかった沖縄の人々ですが、現在では作る人が本当に減ってしまったそうです。

久高島では現在でも食堂でイラブー料理を出しているところもあります。他エリアでも皆無ではありません。ただもし、今一番、上等なイラブー料理を食べたいなら、ぜひ行って欲しいのが、北中城にある「イラブー料理 カナ」。那覇からはクルマで約40分ほど。琉球料理の伝承に力を注ぎ、県下ではその道の権威としてよく知られる、松本料理学院・学院長、松本嘉代子先生の推薦店です。

 

次ページ《ギリギリまでうま味を出し尽くすのが「カナ」流》

関連キーワード

Area