「食の王道」vol.59

【東京 千代田区】紀尾井町 三谷: グルメキュレーター 広川道助

2016.12.29

2年先まで満席の「四谷三谷」が出した、
「紀尾井町 三谷」の実力を拝見に

rd1700_1かつて日本料理業界には、調理師会という組織があって、若い料理人はそこに登録していれば調理師会が店を紹介してくれ、数年経ったら次のステージへ移るよう、きちんと目配せし、教育してくれたものです。

いまでも調理師会自体はありますが、以前ほど機能していません。そのかわりに肥大化しているのが修業先のグループです。

「今度出来た店は新橋の京味さんで十年近く修業したから味は確かだよ」

なんて使われ方がいい例ですが、ネットが普及することによって、客もお店ごとの情報をよく知っているから、修業先を聞けばある程度のレベルは想像できるようになったわけです。そうすると調理師会の指導の下で、いくつもの料理店を渡り歩くという修業方法は流行らなくなってしまいます。

寿司屋の世界も同じで極端に言えば、いま東京で繁盛している寿司屋は「かねさか系」「すし匠系」「すきやばし次郎系」で過半を占めているのではないでしょうか。

そんななかで特異な位置を占めているのが四谷にある「三谷」です。食べログの点数は4.5を超えるというとてつもない評価を受けている寿司屋ですが、主人の三谷さんは、全国各地に支店を持つ「築地寿司清」グループのひとつ、新宿伊勢丹のレストランフロアにある寿司店「魯山」の店長から独立されました。食べログなどネットに頻繁に投稿する「寿司オタク」の人たちは一般的にチェーン店をあまり評価したがりませんから、この数字は驚異的なものです。

グループのなかでは最上位に属し、伊勢丹のレストランフロアの中でも高級志向の店ではありましたが、デパートですから「全方位外交」になるのは仕方のないこと。事実、独立されて間もなくうかがったときは、さして印象に残っていませんでした。

ところがその後、「割烹三谷」といわれるほど高級食材を使ったつまみが評判になり、さらにはつまみや握りの一品ごとに合わせる酒とのマリア—ジュが抜群なことで有名になりました(その酒も日本酒だけではなく、ワインや各国の酒を食材に合わせているのですが、三谷さんはなんと下戸だというのです)。

そうした評判が評判を呼び、いまでは予約は二年以上先でなければ取れないからびっくり。すでに予約を持っている知り合いを探して店に出向かない限りは、新規予約は取れないようです。

そんな状況を憂いたのか、三谷さんが旧赤坂プリンスホテルの再開発ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」に支店「紀尾井町 三谷」を出しました。

四谷の本店は以前と同じように三谷さんが仕切りますが、紀尾井町には四谷で修業をした若い店長を指名。弟子の育成も兼ねているとのことです。

入ってすぐに12人ほど座れるエル字型のカウンターがあり、ゆったりとしたつくりになっています。四谷にはなかった個室も完備されており、接待にも使えます。

料理の流れは四谷と同じで、少しずつ多数のつまみが出て握りへ。料理ごとに酒が替わるのも四谷と一緒ですが、料理と酒の内容は店の判断に任されているようです。

 

《次ページへ》

関連キーワード

Area