奈良萬:「気になる日本酒」 vol.05 あおい有紀

2015.11.06

 

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全国新酒鑑評会で金賞も受賞する実力派による、限定流通の日本酒

福島県喜多方市に位置する夢心酒造は、1877年(明治10年)創業。地元喜多方を中心に親しまれている夢心、そして国内外で愛されている奈良萬を醸しています。

奈良萬、というと、奈良の地酒と思われる方も多いようですが、創業当時の屋号が「奈良屋」であることが由来となっており、直接的には関係はないとのこと。喜多方にある飯豊山(いいでさん)から100年かけて湧き出る軟水の伏流水を、仕込み水に使っています。

日本酒の蔵元では、地元ブランドとその他の地域&海外向けでブランドを分けているところが多いのですが、夢心酒造の場合、地元ブランドの夢心、そして限定流通の奈良萬の2銘柄で展開しています。奈良萬は五百万石のみ(大半は福島県産で、昨年から一部福井産も使用)で全量純米、0℃での品質管理をしているのが特徴。

奈良萬、夢心の共通点は、福島産の米を中心に使用しているところ。原料をすべて地元産で醸す「本物の地酒」を目指しているからです。全国新酒鑑評会も地元産の五百万石で醸した純米大吟醸で出品し、平成9年から3年連続で金賞受賞、そして今年も金賞受賞となりました。

造りにおいては、純米大吟醸から普通酒まですべて6トンの大型タンクを使い、機械制御できるところは機械で、人の手が必要なところは杜氏がしっかり管理。高級酒から手頃なお酒まで全て同じ条件で造りに力を注ぎ、更なる品質向上を目指して毎年改善点を修正しています。なかでも特に気を遣っているのは出荷管理。いくら納得のいく造りができたとしても、貯蔵温度が悪かったり、出荷のタイミングを逃すと、それですべてが台無しになることもあるのです。東海林伸夫社長(満47歳)自らが、必ず瓶詰め前に品質チェック。瓶詰後もすぐに冷却し全商品低温貯蔵の体制を整えることで常に品質を保ち、いつもの夢心、奈良萬の味わいを我々は楽しむことができるのです。

 

モルディブの高級リゾートホテル、One&Only Reethi Rahでプライベートブランドとして採用

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奈良萬はアメリカを中心に海外でも輸出が伸びていますが、展示会などのイベントでも純米大吟醸や純米生酒が特に好評価とのこと。そんな中、モルディブ共和国でも最高級のリゾートホテル、One&Only Reethi Rah内にある和食レストラン、「TAPASAKE」で奈良萬を扱いたい、とのオファーが舞い込み、現在純米大吟醸、おりがらみ生酒、純米無濾過生原酒の3種類の奈良萬が提供されています。特に奈良萬 純米大吟醸は、新酒鑑評会用の日本酒と同じタンクで仕込んだもの(搾り方は鑑評会用とで違いがありますが)。「TAPASAKE」でもメインの日本酒として、オリジナルラベルで提供されています。実際に「TAPASAKE」のシェフが夢心酒造で蔵見学や提供方法、品質管理の大切さを学び、正しい知識を持って、高いレベルで日本の食文化とともに提供しています。徹底した品質管理のもと冷蔵で空輸されることもあり、4合瓶で500USDと日本の10倍以上の価格にも関わらず、ヨーロッパから長期滞在でリゾートを楽しむ宿泊客を中心にハートを射止めています。

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私も今年、モルディブに日本酒レクチャーの講師としてご一緒し、現地での反応を見ることができました。ホテル内でのテイスティングイベントで実際にこの純米大吟醸を口にした外国人客は、「米が原料なのに、なぜバナナのようなフルーティーな香りがするの?」「口当たりがとても滑らかでスムーズ、お米の旨味が広がって柔らかい舌触りね」「繊細でありながら複雑で立体的な味わい、とても美味しくて驚いたわ」など口々に感想を述べていました。「香りは抑えめで、米の旨味を出す味わいを目指しています。食中酒として、料理の味わいを引き立てることができれば」という、東海林社長の思い通りの印象を、海外でも持って頂けており、品質管理が行き届いた場所では、国内とほぼ変わらない味わいで提供できているよう。

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しかし海外全体でみるとまだまだ意識は低く、お燗酒というと、酒燗器や電子レンジを使った熱々のお燗が当たり前。ぬる燗、という概念を伝えたり、お酒によって器を変えたり、保管の際に温度管理をしっかりするなど、課題は多いそう。日本酒の幅広い楽しみ方をもっと知ってほしい。喜多方の日本酒を国内外へ広めたい。熱い想いを胸に、東海林社長は日々邁進されています。

 

取材・文/あおい有紀

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 あおい有紀

フリーアナウンサー・和酒コーディネーター

テレビ、ラジオなど各媒体で活躍する一方、日本の食や和酒の魅力発信を積極的に行い、大切さ、楽しみ方を伝えている。フィールドワークを信条とし、全国の酒蔵に200回以上足を運ぶ。酒蔵ツアーや日本文化×日本酒のコラボイベント、様々な国籍の料理×日本酒のマリアージュイベントなどの企画・主催をはじめ、各地での講演、セミナー講師多数。ル・コルドン・ブルー日本酒講師。観光庁「平成25年度 官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」にて、目利き役。女性向け日本酒本「日本酒日和」(舵社)監修。日本酒造青年協議会「酒サムライ」叙任。 

【資格】きき酒師、焼酎きき酒師、WSET(International Higher Certificate in Wines and Spirits)、一級フードアナリスト、日本箸教育講師など