ココ・ファーム・ワイナリー 第一楽章2012「いますぐ飲みたい日本ワイン」vol.07 柳忠之

2015.11.07

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サミットで饗され一躍名を知らしめた

栃木県の足利市にあるココ・ファーム・ワイナリーは、知的障害者更生施設「こころみ学園」が運営するワイナリー。今から50年以上も昔の1958年、当時、中学校の特殊学級の担任をしていた川田昇さんが、生徒たちと開墾した3ヘクタールの畑に始ります。ワイナリーが出来たのはそれから20年あまり経った1980年のこと。84年にようやく醸造免許が下り、1万2000本のワインが造られたそうです。

ブドウ栽培やワイン醸造はその道の専門家によって指導されていますが、ブドウ畑やワイナリーでの実作業に当たっているのは、今なおこころみ学園の園生たち。2000年の九州・沖縄サミットでスパークリングワインの「NOVO」、2008年の北海道・洞爺湖サミットで赤ワイン「風のルージュ」が採用され、その品質の高さが世間に知れ渡るところとなりました。

 

無清澄、無ろ過の個性的な味わいが特長

ココ・ファーム・ワイナリーでは足利市や隣の佐野市にもつ自園のほか、北海道、山形、長野、山梨の契約農家からブドウを購入し、ワインを醸造しています。マスカット・ベーリーAや甲州といった日本固有の品種はいうまでもなく、欧州系のシャルドネ、ピノ・ノワール、ケルナー、ツヴァイゲルトレーベ、それにタナやノートンといった珍しい品種まで。中でも昔から高い評価を得ているのが、自園のマスカット・ベーリーAから最上のものを選んで瓶詰めされる「第一楽章」という名前の赤ワインです。

このワインは自生酵母による自然発酵によって造られています。日本をはじめとするワイン造りの歴史が浅い産地では、市販の乾燥酵母を使うのがふつうですが、敢えて、コントロールの難しい自然発酵に挑戦しています。また、裏ラベルには「無清澄、無ろ過」とありました。ワインに含まれているすべての成分を、一滴も漏らさずボトルの中に封じ込めたい。そんな造り手の強い意志が感じられます。

ただし、これはやさしいワインではありません。無清澄、無ろ過なので当たり前ですが、外観は濁っています。香りは複雑で、自生酵母特有のクセがあります。口に含むと、ピチピチッとごくわずかに炭酸ガスが感じられるでしょう。口当たりは滑らかで、喉越しもシルキーですが、やや歪な後味が残ります。いわゆる自然派の範疇に入るワインでクセが強く、このタイプのワインが好みの人ならハマること請け合い。一方、苦手な人も少なくないに違いありません。

ワインにある種の人間味や、自然のなすがままの姿を求める人にすすめたいワインです。

 

5300円(税込)/ココ・ファーム・ワイナリー www.cocowine.com

取材・文/柳忠之

 

【柳忠之の〈いますぐ飲みたい日本ワイン〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/tadayuki-yanagi/

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