「食の王道」vol.62

【東京 人形町】蕎の字:グルメキュレーター 広川道助

2017.01.18

評判の「静岡天ぷら」の新店
人形町「蕎の字」の新たな試み

rd1700_1昨年から私の周囲で「静岡の天ぷらが面白いよ」という声が聞こえてきました。

天ぷらは以前も書きましたが、日本料理の中でも保守的なジャンルで、中心となるネタはずっと変わらず、揚げ方、食べ方にコペルニクス的転換が行われたという記憶もありません。

そこに「静岡の天ぷら」です。どうやら、「成生」という店がその中心にいて、これまでの天ぷらの材料にこだわらず、駿河湾であがる魚を中心に使い、揚げ方も研究しているんだと聞きます。

私は残念ながら訪れる機会がないまま、2016年を過ぎてしまいましたが、訪れた食いしん坊たちの写真を見ると、なかなか面白い店のようです。静岡なら日帰りも十分できるので、「近いうちに行かないとなあ」と思っていたところに、新しい情報が飛び込んできました。

静岡で人気の天ぷら屋が人形町に移転したというのです。正確にいえば、天ぷらを中心にして最後は蕎麦で〆る店。島田市で営業していたが、「天ぷらの本場、東京で勝負してみたい」と考えて昨年、人形町で旗を上げたのだそうです。

店主の鈴木利幸さんはまだ30代でしょうか。話を聞いたら、父親の代は蕎麦屋だったそうですが、自分が責任を持つようになって、天ぷら中心にしたのだそうです。

コースは6900円から。最近の料理店はものすごく高いか、リーズナブルかに分かれています。この値段だと酒を飲んでも1万円以内で収まりますから、財布に優しい、ありがたい店ですね。

rd1700_2壁に掛けられている木札がその日の食材。訪れた日は、太刀魚や鯵、桜エビという、江戸前の天ぷらでは使わない食材が並んでいます。

最初に出たのは車海老の天ぷら。海老から始めるのは江戸前天ぷらの定番ですが、そこは崩していない。その後の展開もふくめて、オーソドックスなかたちは守りながら、新しい天ぷらの概念を入れていこうという姿のようです。個人的には、こういうスタイルは嬉しいところです。

rd1700_3太刀魚は刺身と天ぷらでいただくという趣向。この魚はある程度の大きさがないとうまくないのですが、駿河湾の太刀魚はしっかり脂がのっています。皮目を炙った刺身は脂の味わいを感じ、天ぷらではふんわりとしたうまさを感じました。

 

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