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「本日もいい塩梅」 vol.38

製塩所訪問記~福島県・会津山塩①~:ソルトコーディネーター 青山志穂

2017.01.27

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会津地方を支えた希少な塩

以前にこのコラムで特集した「温泉からできる塩」でご紹介した「会津山塩」の生産地を訪れたのは、寒波の影響で大雪警報も出た1月中旬のこと。今年は雪が少ないとはいえ、降り始めた雪は見る間に積もり、山深い場所に位置する製塩所をあっという間に白く染めていました。

岩塩が産出されない日本では、塩は主に海水から作られるため、製塩所のほとんどは海沿いに位置し、塩は険しい「塩の道」を通って内陸地に運ばれるのが一般的でした。そんな中、塩分を微量に含む温泉水が湧くこの地では、それを利用して古くから製塩が行われてきました。1200年前にこの地に停泊した弘法大師によって開湯したという2つの塩井から湧く温泉水を原料に作られた塩は、江戸時代には年間8000俵も生産され、年貢として会津藩に納められるとともに、会津地方に賑わいをもたらしました。また、明治時代には葵の紋に模られた塩が皇室に献上されるほど珍重されていました。

しかしながら、専売制度の下、塩づくりは昭和23年に一旦終焉を迎えることとなります。

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逆境に負けない熱い心が復活へと導いた

平成17年、村と商工会からの「特産品として会津山塩を復活してほしい」という呼びかけに集まったのは、地元で温泉宿を営む米澤屋さんを中心とした有志12名。とはいえ、誰も製塩をやったことはない状態。まずは塩づくりの研究をスタートしましたが、当初、同じく山中で温泉水から製塩を行う長野県の「山塩」を見学に行った際には、「商売にはならないからやめておきなさい」と言われるほど、山中での塩づくりが厳しい道のりになることは明白でした。

なぜなら、「会津山塩」の原料となる源泉に含まれる塩分濃度は、たったの1%ほど。海水の1/3です。つまり、同じ量の塩水を原料にしても、出来上がる塩の量は海水の1/3にしかならないということ。さらに、源泉に含まれるカルシウムと鉄が多く、釜の傷みも激しくなります。その上、冬には氷点下と降雪が当たり前のこの地域では、薪を炊いて釜を沸騰させるまでにはるかに長い時間と多くの燃料がかかります。雪が積もれば、製塩所の前に詰まった雪をかかなければ、中に入ることすらできません。

このような塩づくりにとってはマイナスの要因が多い地域で、それでもかつてこの地で愛されてきた「会津山塩」を復活することができたのは、ひとえに幾度も訪れた危機を諦めない気持ちで乗り越え、支えてきた地元のみなさんの心意気以外にありません。

 

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