「お米が主役」 vol.62

築地玉寿司の「ささしぐれ」:お米キュレーター 柏木智帆

2017.01.24

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“幻のお米”ササシグレ100%のシャリ

「ササシグレ」というお米の品種を知っていますか。

一度は姿を消しましたが、近年になって蘇った“幻のお米”です。

東京・表参道にある鮨店では、宮城県産ササシグレだけをシャリに使っています。その名も「築地玉寿司ささしぐれ」。店名にも表記しているように、ササシグレを前面に出した鮨店です。ササシグレは、農薬や肥料に頼らない「自然栽培」という農法でつくられています。

rd1700_IMG_9288写真(上)/ ササシグレ100%のシャリ

ササシグレは、かつては「東の横綱ササニシキ、西の横綱コシヒカリ」とも言われたササニシキの親にあたる品種。そのおいしさから宮城県を中心とした東北地方で盛んに栽培されましたが、天候による病気の発生や、肥料の入れ過ぎによる倒伏などによって、1960年代後半には姿を消し始めました。

ところが、近年になって、農薬や肥料に頼らないお米づくりをしている自然栽培農家を中心に、このササシグレを復活させる動きが生まれ、とうとう2014年に表舞台に返り咲いたのです。

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写真(上)/ オリジナルの赤酢を使ったシャリ

適度な硬さと弾力の良さ ほろほろと口の中でほぐれる米粒

ささしぐれの鮨を口に入れると、しっかりと弾力のある米粒がほろほろと口の中でほぐれていくのを感じられます。ふっくらと炊き上げごはんが適度な硬さを保ち、鮨ネタとの相性は抜群。

じっくりやわらかく煮詰めた一本の煮穴子、ネギトロの上にウズラの卵黄を乗せた軍艦巻きなど、築地玉寿司オリジナルの人気ネタは数あるものの、お客が自ずとネタよりもシャリに意識を向けながら食べる鮨は、シャリに思い入れのある同店ならでは。

同社秘書広報室次長の太田佳子さんは、自然栽培ササシグレを知ってからは自宅でも常食するほどのファンになったそう。「弾力の良さ、噛んでいるうちにじわりと感じる甘さ。1粒1粒が生命力を持っているように感じます」。

市場にはほとんど出回っていないことから、ササシグレを「知らない」「初めて聞いた」というお客が多いため、時にはシャリだけの鮨を提供して、お米そのものを味わってもらうこともあるそうです。

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写真(上)/ シャリの温度を保つために、特注の湯煎付きのおひつを使っている

同店によると、ササシグレは米粒が若干かためなので酢飯に良く合うそう。赤酢によって若干の赤みを帯びたシャリは、底に湯を張った特注のおひつに入れ、シャリの温度を下げすぎないように工夫しています。鮨屋というとネタの新鮮さに注目が集まりがちですが、シャリを非常に大切にしていることがよく分かります。

 

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