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「気になる日本酒」vol.50

大古酒累醸貴醸酒オーク樽貯蔵2012:日本酒キュレーター あおい有紀

2017.02.14

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海外で高い評価を受け注目されている貴醸酒のパイオニア、榎酒造

貴醸酒、という日本酒をご存知でしょうか? 通常日本酒を造る際、醪は三段仕込みで造られますが、三段目の留添え時に使う仕込み水の変わりに日本酒を使うことで、糖度を残したアルコール発酵となるため、濃厚な甘口のデザート酒のような味わいになります。日本酒を使って日本酒を造る…とても贅沢なお酒なんですね。

今では、貴醸酒を造る蔵元も増えてきましたが、1974年に日本で初めて貴醸酒を商品化したのが、広島県呉市にある倉橋島で1899年(明治32年)創業の榎酒造。華鳩、清盛、の銘柄を造っていますが、先代の榎徹会長が、人がやったことの無い新しい事をやろうと様々なチャレンジをする中で、貴醸酒を造ることにしました。

現在、全生産量500石のうち、1割が貴醸酒とのことですが、華鳩、というと貴醸酒のイメージがまず頭に浮かぶほどに、榎酒造の顔となっています。先日、蔵に訪れお話を伺うことができました。

rd1300_(2)1瀬戸内とはいえ、1月の朝9時は体の芯から冷えるような寒さ。蔵に向かうと、澄み切った空気には蒸気が立ちのぼり、活気ある蔵人の皆さんと蒸し米の香りが出迎えてくれました。

現在、酒造りの現場を仕切るのは、4代当主の榎俊宏社長(52)。上智大学理工学部卒、当時滝野川にあった国税庁醸造試験所に研修生として1年間在籍。そして東京にある業務用卸の澤村屋にて、主に配送補助を1年間経験し、平成元年蔵に戻ります。

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その頃、榎酒造は全酒類卸売業と清酒製造業の二足のわらじで、卸売業の方が売り上げが大きく、その一部で『華鳩』を売っていた状態でした。卸売業の方は番頭さんが仕切り、製造業の方は地元大手『賀茂鶴』や『千福』などを引退した、元気なお爺さん5~6人で造っていたといいます。

とはいえ、榎徹会長は酒造業の方で様々なチャレンジを繰り返していたこともあり、良いお酒を造る土壌だけはしっかりしていました。「全国新酒鑑評会の金賞獲得のために尽力したり、新しいタイプの貴醸酒を模索するなどしていましたが、売れる売れないは別にして父は結構な量を造ってしまうので、帰った頃やその後も、私は常にその不良在庫に悩まされていました」と、榎俊宏氏。平成16年10月から酒造業一本にし、平成17年10月に社長就任となりました。

 

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