「気になる日本酒」vol.50

大古酒累醸貴醸酒オーク樽貯蔵2012:日本酒キュレーター あおい有紀

2017.02.14

進化する華鳩、信頼のおける現杜氏との出会い

「ホッとやすらぐ酒」をコンセプトに、造りの上では当たり前のことを当たり前にやる、がモットー。現場で榎社長の右腕となっているのが、藤田忠杜氏(46)です。

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愛媛大学農学部の大学院修士過程修了後、杜氏になりたい想いで就職活動し、榎酒造にご縁がありました。当時酒造りは職人のような世界で、杜氏になるまで20年かかると言われていた時代。

「下働きの頃からお爺さん杜氏に鍛えてもらいましたし、本人もスポンジのように吸収していきました。5年目の酒造期お爺さん杜氏の体調がすぐれず、蔵入りできないところ『しっかり鍛えてあるから藤田を中心にやっていてくれ』と言ったままその酒造期に蔵入りできずお亡くなりになってしまいました。

翌年から彼は、正式に杜氏として造っています。その杜氏としての1年目の造りで、全国新酒鑑評会金賞、広島杜氏組合の自醸酒鑑評会第1位、など賞を総ナメした華々しいデビューでした」と榎社長。

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華やかな香りの『広島吟醸酵母』が全盛の時代。藤田杜氏にとって扱い慣れた酵母でしたが、6~7年前から榎社長の方針で、原点に戻る意味を込めて香り系の酵母から、香り控えめな昔ながらの『熊本酵母』にどんどんシフトしていきました。

変えた当初は藤田杜氏も戸惑ったようでしたが、年々熊本酵母の扱いに慣れ、今では榎社長が考える、食事に合わせながら飲み続けられる美味しい日本酒を安定的に造る事ができるように。

「藤田杜氏は、造る時期はもちろん緊張感を持っていますが、普段は温厚な優しい性格で、蔵の中も柔らかな雰囲気です。今でも、父は新しいことを思いついては仕込み配合を考え、藤田杜氏の後ろをついて回りイメージの酒を造らせようとしていますが、酵母を変えたり、父の無理難題にも出来ないと断るより『何とかやってみましょう』と工夫し、柔軟に考えを吸収して具現化してくれますね。

自然の声を聴く事が上手というかセンスがあるというのか、微生物の働きがしっかりできる環境を整えた後はその声や様子を見守るような造りです。藤田杜氏が弊社に来たころは一緒に酒造りを頑張ろうと言っていましたが、今では信頼し任せきりに。今の華鳩には欠かせない杜氏ですね」

と榎社長も太鼓判!蒸し米をタンクに入れたり、洗米の作業を見せて頂きましたが、15キロの米を運んだり、冷たい水を扱う大変な作業ながら、蔵人同士笑顔を覗かせることもあり、温かい雰囲気が蔵を包み込んでいる、だからホッと癒される優しい味わいの酒になるのかな…という印象を受けました。

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