「気になる日本酒」vol.50

大古酒累醸貴醸酒オーク樽貯蔵2012:日本酒キュレーター あおい有紀

2017.02.14

蔵人の情熱、そして時が醸し出す極上の一滴

榎酒造では、様々なタイプの貴醸酒を造っていますが、今回ご紹介するのは、「大古酒累醸貴醸酒オーク樽貯蔵2012」。華鳩は、貴醸酒を仕込む際に使う日本酒は純米酒ですが、この貴醸酒を造る際に使った日本酒は、28年熟成の貴醸酒という何ともレアな造りで、さらに搾って火入れしたあと、1年ほどオーク樽に寝かせています。

熟成させた貴醸酒で貴醸酒を造る、だから“大古酒 累醸貴醸酒”なのですね。30年の時を経て完成した、なんとも贅沢な一本です。
常温で熟成させているので、色合いは褐色に近い琥珀色。カラメルやナッツ、ドライフルーツのような香りで、とても滑らかな口当たり。トロンとした複雑味のある甘味が舌の上に乗り、後半は長い余韻が続きますが、程よい酸味が重すぎずオーク樽の香りが上品さを醸し出し、心地よい気分へと誘ってくれます。

特に海外で人気が高いという貴醸酒、まるでシャトー・ディケムの貴腐ワインの様だと評価する人も。

榎社長のお薦めは、味の濃い食べ物や肉料理、またチーズやバニラアイスなど乳製品との組み合わせ。「バニラアイスに貴醸酒をかけると、少しビターなラムレーズンアイスのような味わいが楽しめます。

また、砂糖と酒と醤油で作る関西風のすき焼きであれば、砂糖を控えめに貴醸酒と醤油で味付けすれば上品なすき焼きができますよ。」とのこと。この大古酒累醸貴醸酒をすき焼きに使うだなんて、ちょっと勿体無い気もしますが…!一度頂いてみたいものです。

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表参道のフレンチ &ecleにて チョコレート&ナッツ&バルサミコパフェに合わせて

先日、フレンチと日本酒のペアリングディナーを主催した際、チョコレートのデザートとこのお酒を合わせてみましたが、チョコ、ナッツ、バルサミコ酢の、香り、甘味、酸味などとピッタリ合い、互いの相乗効果で素晴らしいハーモニーを楽しめました。

このお酒は6年に一度しか造っておらず今回で3度目とのことですが、数も限られていますので、ぜひ和食から洋食まで、様々な料理に合わせながら、貴醸酒の奥深さを感じていただければと思います。
 
榎酒造でもう一人欠かせない人が、榎社長の姉、榎真理子さん。実際の造りには関わっていませんが、新商品の構想やラベルデザインをしたり、全国の試飲会でブースに立ったり、小売部の販売を主にネット販売も担当したりと、広い意味で酒造りや経営に携わっています。

「世の中全般の姉と弟の関係は、大概弟は姉に頭が上がらないと思いますが、うちもそうですね。海外経験が長く、清酒製造業一本にする2~3年前にフランスから帰ってきて榎酒造を盛り立ててもらっています。会社の今後についての考え方は一致しているので話が通るのも早く、大変頼りにしています」と榎社長。

真理子さんには試飲会でよくお会いしますが、お話からも華鳩愛が感じられ、凛とした姿勢と笑顔が素敵な方。蔵を後にする時、愛犬のコロちゃんも一緒に、三人でお見送りしてくださいました。

rd1300_(10)8「疲れたときに飲んでも、ホッとやすらぐお酒を造るのが目標で、貴醸酒や古酒にはその到達点のようなものを感じます。父に負けないような発想をもってトライし続け、楽しく貴醸酒の可能性を広げていきたいですね」と榎社長は言います。

これまでIWC(インターナショナルワインチャレンジ)の古酒部門で、6度のトロフィー、1度の金賞、1度のチャンピオンと素晴らしい評価を受けている華鳩の貴醸酒。これからも益々国内外に向けて、貴醸酒の先駆者としての発信を続けていっていただきたいですね。

 

取材・文/あおい有紀
ボトル写真/sono(bean)

 

【あおい有紀の〈気になる日本酒〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/yuki-aoi/

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 あおい有紀

フリーアナウンサー・和酒コーディネーター

テレビ、ラジオなど各媒体で活躍する一方、日本の食や和酒の魅力発信を積極的に行い、大切さ、楽しみ方を伝えている。フィールドワークを信条とし、全国の酒蔵に200回以上足を運ぶ。酒蔵ツアーや日本文化×日本酒のコラボイベント、様々な国籍の料理×日本酒のマリアージュイベントなどの企画・主催をはじめ、各地での講演、セミナー講師多数。ル・コルドン・ブルー日本酒講座講師。観光庁「平成25年度 官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」にて、目利き役。女性向け日本酒本「日本酒日和」(舵社)監修。日本酒造青年協議会「酒サムライ」叙任。 

【資格】きき酒師、焼酎きき酒師、WSET(International Higher Certificate in Wines and Spirits)、一級フードアナリスト、日本箸教育講師など

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