【東京 赤坂】黒座暁楼:グルメキュレーター 広川道助

2017.03.09

大型店舗だから出来るいいとこ取りの
魅惑のラインアップ

1 copy-min個人でやっている料理店と、会社組織でやっている料理店ではおのずと、得手不得手が違います。

個人は意思決定が早く、好きな食材を使ってメニューをつくれますが、ロットが小さいため仕入れ単価は上がり、それがメニューの値段に反映されるのは致し方ないところです。内装や食器に大きなお金をかけるのもむずかしいでしょう。

その反対で会社組織の店は、内装や食器類も合理化できるし、食材の調達ロットが大きいので仕入れ単価は低くなりますが、組織の論理が優先しますから小回りが利かず、個性も出にくいし、メニューの変化をこまめに見直すことはむずかしいでしょう。

しかし、もし両方のいいとこ取りが出来たなら? 仕入れ単価が安く、なおかつメニューの自由度も高い料理店があれば、客としてはこんなにありがたいことはありませんが、それを少なくとも目指しているように感じるのが、赤坂の「黒座暁楼」です。

経営は際コーポレーション。かつて鉄鍋餃子を流行らせた「紅虎餃子房」をはじめとして中華のレストランを展開していることで有名でしたが、いまやイタリアン、フレンチからホテルまで400以上の店舗を擁する一大飲食グループになっています。

なかでも「黒座暁楼」は個室が多く、130席もある高級居酒屋なのですが、ここのメニューが面白いのです。近海本マグロからふぐ、クエ、鰻、牡蠣、イノシシ、クマ、和牛、豚、ネギ、筍など、季節の走り、旬、名残りの食材がメニューに載っており、どれも美味しそうな料理名です。

2 copy-min「なんでだろう」と少し考えて、腑に落ちました。際コーポがやっているそのほかの店の食材が、この店に集まっているのです。たとえば大鰻は鰻料理専門店からですし、牡蠣やイノシシはホテルがある五島列島から、銘柄豚はトンカツ屋と同じ食材といった具合。だから専門店レベルの食材が、この一軒でまかなえてしまうのです。

しかも店独自の仕入れも併用し、グループ内で調理方法は自由にしているというので、エッジの効いた料理も楽しめるというわけです。そういうと、

「料理はシェフの腕次第だから、いいものがあっただけじゃあしょうがないだろう」

という声が聞こえてきそうですが、メニューを見ているとシンプルな調理が多い。そのあたりのオペレーションの簡素化も飲食店経営の経験が長いから出来ることでしょう。

 

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