シャンテYA甲州樽発酵2015:ワインキュレーター 柳 忠之

2017.03.22

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マスカット・ベーリーAの名人が造る甲州

先だっての「LIFE with WINE」というイベントで、ダイヤモンド酒造の雨宮吉男さんと久しぶりにお会いしました。会話の中で、翌日開かれるピノ・ノワールのカンファレンスの話題になり、「じつはβイオノンのサンプルをもってるんですけど、嗅いでみます?」と雨宮さん。

βイオノンはスミレの香りの成分で、ピノ・ノワールに含まれています。このβイオノン、日本人には感じない人が多いそうで、私も嗅がせてもらいましたがいまひとつピンときませんでした。日頃、あんなにピノ・ノワールと接していて、フローラルなアロマも嗅ぎ取っているつもりでいたのですが……。

おっと、今回のテーマはピノ・ノワールの香りではありません。雨宮さんが香り成分のサンプルを持ち歩くほど、研究熱心ということを言いたかったのです。

ここでご紹介するワインは甲州です。雨宮さんというと、マスカット・ベーリーAの名人というイメージが強いのですが、甲州の造りもじつにみごと。シュール・リーの「アマリージョ」はピュアな風味で好きな甲州のひとつですが、初めて試した「甲州樽発酵」も、甲州に樽もありだな……と思わせてくれる逸品でした。

こだわりのオーク樽仕込みによる厚みある味わい

ワインは下岩崎地区の甲州を厳選し、フランス産のオーク樽で発酵、熟成。この樽がまたこだわりの樽なのです。

かつてフランスのブルゴーニュ地方でワイン造りの修行を積んだ雨宮さん。そこで出会ったのがムルソー村のダミィ社が作る樽でした。樽材の産地や樽メーカー、焼き具合や樽の大きさがワインに与える影響は小さくありません。このメーカーの作る樽なら繊細な甲州にも合うと確信した雨宮さんは、帰国後、日本と取り引きのないダミィ社と交渉し、樽を独自輸入しました。

今では商社が輸入を始めたようですが、雨宮さんは白ワインの醸造に今もなおダミィ社の樽を使っています。オークの産地は中央高地のアリエと北東部のヴォージュ。焼き具合はミディアムで、半分が新樽だそうです。

普通新樽の比率が高いとバニラや炒ったアーモンドのようなフレーバーがプンプン感じられるもの。ところがこのワインはとてもきれいにまとまり、樽香はほどよいアクセント程度。聞けば樽の大きさは450リットル。一般によく使われる樽の大きさは225リットルや228リットルですが、その倍の大きさにすることでオークの影響を控えめに抑えることができたのでしょう。

味わいはしっかりと凝縮した果実味があり、バランスのとれた酸も心地よく感じられます。ボディに厚みのある甲州をお望みの方におすすめです。

2500円(税抜)/ダイヤモンド酒造

 

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