龍勢 画龍点睛 純米大吟醸:日本酒キュレーター あおい有紀

2017.03.28

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完全発酵で醸し 熟成で更に真価を発揮する、全量純米蔵

安芸の小京都、広島県竹原市。瀬戸内海に面し、江戸時代中期から製塩や酒造業で栄えた地域で、お屋敷、お寺など今でも史跡や重要文化財が残り、風情ある佇まいの通りが続いています。

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その一角にあるのが、「龍勢」を醸す藤井酒造。1863年(文久3年)創業で、現在は第5代当主の藤井善文社長(62)が後を継いでいます。

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竹原は、今も地下水を水道水として使用しているほど水に恵まれ、仕込み水としてそこから湧き出る軟水を使用。原料米の特性を活かすため、1桁台の協会酵母を使用していますが、全生産量のうち約10%は手間も時間もかかる酵母無添加の生酛造り。

「特に生酛は生粋の生酛造りを行い、自然との対話で米と米麹・水以外は一切添加していません。また、平成12年度から純米蔵となりました。普段、自分達は純米酒しか飲まないので、自然に純米しか造りたくなくなったのです」と藤井社長は言います。

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龍勢は、完全発酵の純米酒、というのも特徴の一つ。完全発酵にすることで、身体に優しく、原料米の特性を出しやすい上、長期の熟成にも耐える酒質になるのだとか。

食事と共に楽しめて、お燗でも美味しいお酒を目指していますが、まさに龍勢をいただく度、香りは控えめでコクがあり米の力強い味わいを感じながらも、料理の個性を上手く引き立たせて負担なく杯を重ねられる、お燗にするとまた口当たりがまろやかに、懐の深さを感じさせてくれるお酒だなぁ、という印象を私自身持っていました。

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原料となる米は、広島県産の八反錦、八反、山田錦で全生産量の70%を占め、契約栽培の鳥取県産山田錦、岡山産雄町も使用しています。藤井社長の弟であり東京農業大学卒業の藤井雅夫氏が、平成元年にワインメーカー勤務から蔵に戻って平成6年から杜氏として酒造りの現場を仕切り、藤井社長の長男である藤井義大氏(33)も、3年前より酒造りに携わっています。

 

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