【東京 渋谷】富士屋本店:グルメキュレーター 広川道助

2017.04.27

変貌し続ける渋谷において変わらない
「大衆立呑酒場 冨士屋」の楽しみ方

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東急が先導する再開発によって、子供の街から大人の街へと見事に変貌をとげつつある渋谷ですが、変わらないのはこの地域の飲食事情です。東急百貨店本店の裏のほう(最近は奥渋谷というそうですね)や六本木トンネルの前後あたりまで歩けば、最近は面白い店が出来ていますが、駅周辺には「これだ!」と思う店がいまだにありません。

毎日あれだけの乗降客がいるので、わざわざリスクをかけずに無難なことをやっていれば、じゅうぶん儲かるからでしょう。そんな中、渋谷らしからぬ面白い店が渋谷駅から246をわたって恵比寿のほうへ少し歩いた地下に存在します。「大衆立呑酒場 冨士屋本店」です。

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同じ渋谷といっても、再開発からは取り残されたような地域で、古い雑居ビルの地下。階段を下りていくと、調理場を囲んでコの字型の広い立ち呑みカウンターがあります。

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夕方5時からの営業ですが、6時を超えるとほぼ満員。入口に佇んで「もういっぱいかあ」とひるんでいたら、「こっちに来てね」と誘導され、いっぱいだった空間にちょうど人数分の空きができます。なので、自分の場所を確保してから注文を考えるわけです。

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大瓶のサッポロビールからスタートするのもいいですが、常連はホッピーからスタートします。というのも、ホッピーを頼むと宝焼酎の360ミリリットルボトルと氷がドンと置かれ、ホッピーだけをお替わりするのがお得だとわかっているからです。ちなみにレモンサワーを飲みたい場合でも、ここでは宝焼酎、レモン、炭酸を頼んで、自分で作るのがお約束です。

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壁には数十種類のメニューが書かれていますが、まず注文するのが「ハムキャ別」。ネーミングのとおり、ハムとキャベツにマヨネーズを添えたシンプルな料理なのですが、ハムは「高級ショルダーハム」(壁の短冊に書かれています)らしく、常連はまずこれを頼むようです。

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あとは、お好きなように。マグロやブリ、タコの刺身もあれば、居酒屋の定番である煮込みもポテトサラダもあります。周囲を見渡せば、揚物を注文される割合が多いようで、ハムカツやアジフライから、竹輪やマイタケの天ぷらまで勢ぞろいです。

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立呑酒場ですから、隣とはくっつかんばかりの距離ですが、やはりお隣さんの食べているものは美味しく見えるものです。

「これなんですか?」「ハムカツです、美味しいですよ」といった会話がきっかけで、グループ同士仲良くなることもしばしば。いくら立呑みといえども渋谷ですから、元気のいい女子会と親しくなったりもするのが楽しい場所です。

ホッピーがなくなったら、ウイスキーを頼んでハイボールに。組み合わせは無限大ですが、焼酎ボトルが空いたころが切り上げるタイミングというものでしょう。立呑みでだらだらと過ごすのは野暮の極みです。

でも、帰宅するにはまだ早いと思われたなら近所の冨士屋グループへ。3軒あって、どこも立呑み中心ながら、本店と違ってワインバーや洋食などこじゃれた雰囲気ではありますが。

「富士屋本店」
住所/渋谷区桜丘町2-3 富士商事ビル地下一階
電話/03-3461-2128
営業/17:00〜21:30(土〜20:30) 日祝第4土曜休み

 

《プロフィール》

広川道助
学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/dousuke-hirokawa/