【東京 阿佐ヶ谷】SATOブリアン:グルメキュレーター 広川道助

2017.05.11

焼肉は韓国料理とは大違い
阿佐ヶ谷「SATOブリアン」で実感した

焼肉は和食でしょうか。

「そんなことはない、韓国から来た料理に決まっている」とおっしゃる御仁も多いでしょうが、焼肉と一緒にクッパやケジャンなどの韓国料理がメニューにあるならともかく、最近の焼肉店は独自の進化を遂げており、いまや日本発のオリジナル料理といったほうがいいのではないかと、私は考えています。

そのなかでも東京の焼肉フリークが大注目しているのが阿佐ヶ谷の「SATOブリアン本店」です。店主の佐藤明弘さんは、渋谷の焼肉店の店長をしていた時代から「シャトーブリアン(ヒレの最高級部位)」が大好きで、それを中心にした店を開いたという具合。

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本来、牛肉はすべての部位がバランスよく市場に出るのでシャトーブリアンだけを買い占めることは不可能なのですが、いまや佐藤さんの店の勢いは止まらず、他店では手に入らなくてもSATOブリアンに行けば食べられるという状況になっています。

そしてこの店の特徴は、焼肉店といえども焼くのは店のスタッフ。客はビールを飲みながら、最適の焼き具合になるのを待っていればいいという楽ちんの店なのです。

それもあってか、現在SATOブリアンは予約の取れない店の筆頭ですが、ここが偉いのは毎月営業開始日に翌月の予約を取るので、辛抱強くかけ続ければ必ず予約が出来ることです。

阿佐ヶ谷駅から歩いて5分程度。飲食店が立ち並ぶ一角に店はあります。ビールでのどを潤していると最初に出るのはビーフシチュー。これでお腹を温めてもらおうという算段なのかなとも思いますが、これが手抜きがなく美味しいのです。

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そして厚切りのタン、ハラミ、ランプなどへ。使われる牛肉はもちろん和牛、それもほとんどが九州産です。私は産地の違いを味でわかるほど牛肉を食べこんでいませんが、ここでいただく肉には透明感があるように感じます。等級でいえばAランク、脂肪分がしっかりある肉もかかわらず、くどさがまったくないのが特徴といっていいでしょう。

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もうひとつ、この店の楽しいのはオリジナル料理です。「ブリカツサンド」は厚切り牛肉のカツのサンドイッチですし、「ヒレスキ」はニンニク入りの甘めの割下と卵黄で食べるすき焼きスタイルでご飯に乗っけるのもありです。ラストに出される「ブリめし」は、これまた分厚い牛ヒレをタレにくぐらせて食べるミニ丼。ときには雲丹やキャビア、松茸を乗せることもあるようです。

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このように、ネーミングも楽しく、味も抜群な料理が焼肉のあいだにはさまり、いつの間にかおなかに入ってしまいます。

しかも消化を助けるアルコールがリーズナブルなのもうれしいところ。ワインは3000円台から各種揃っていて、よほど高いものを頼まない限りは値段を気にせずに飲めます。

ここまででほぼお腹はいっぱい。さらに食べたい向きには冷麺が用意されていますが、実は韓国料理と思しき食材は、箸休めのキムチと冷麺くらいしかありません。

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逆にカツサンド、すきやき、丼と日本由来のオリジナル料理のほうが楽しいSATOブリアン。これを和食と呼ばずに、なにが和食かといいたくなるわけです。

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「SATOブリアン」

住所/杉並区 阿佐谷南3-44-2 新井ビル1F
電話/03-6915-1638

 

《プロフィール》

広川道助
学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら
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