東京では食べられません! 宮古名物、「どんこ料理」ってどんな味?

2017.05.28

どんなに流通が発達しても、どれだけ全国の魚が築地に集まっても、水揚げされた港町で食べる魚料理には、なかなか敵うモノはありません。海に囲まれた日本は魚種も多いので、まだまだ地元の人たちだけが美味に舌鼓を打っている魚もふんだんにあります。

そんな、この町ならではの魚を食べに、岩手県宮古市にやってきました。宮古市役所前から宮古湾へと向かう閉伊川は、穏やかそのもの。

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しかし東日本大震災に加え、2016年夏の大きな台風被害もあり、市内を道行くクルマはいまでも工事車両が多いのが現状。

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それでも漁業は着実に、しっかりと復活しています。そんな宮古港魚市場を覗かせていただけることに。2015年度の宮古島魚市場・水揚総額は84億2300万円。特にマダラは6年連続水揚量日本一を誇ります。セリは朝7時と午後2時半の2回。岩手県内で1日2回セリをするのは宮古のみなのだそう。魚の取り扱い量の多さがうかがえます。

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市場内部に入ると広大な敷地に魚がずらり。訪問時は冬だったので、鮭、タラ、牡蠣、ホタテなどが並んでいました。震災の影響で手狭になった卸売場ですが、今年2017年4月には増築が完了し、魚介類の鮮度・衛生保持設備も新設されました。

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夜明けとともに定置網漁船から届くのは、鮭。大漁です。

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ほらね。

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タラと言うと手軽な食材というイメージですが、こんな風に特別に扱われる超美品&高級なモノも。

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このアタリでタコと言えば、ミズダコ。

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意外に知られていませんが、実はフグも獲れる! 三陸のフグは小さなクサフグが多く、唐揚げや味噌汁にするのだそうです。他にもワタリガニや毛ガニ、マトウダイ、イワシ、サバ、ソイ、そしてサワラも……。まさに、三陸は海の幸の宝庫です。

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さて、そんな宮古に来て食べようと思ったのは、どんこです。「え、コレ何?? ちょっとぬるっとしてて、深海魚?」……と思われたかも。

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どんことは、エゾイソアイナメの地方名。アイナメという名前がついていますが、実際にはタラの仲間です。上品な白身、脂ののった肝がおいしく、鍋やたたきで食べるのが人気。一年中獲れるけれど、肝の脂ののりがよい冬が一番の旬だそう。平成28年の岩手県全体での水揚げ量は17万8600トンほど。中でも10万トン以上が、宮古魚市場で水揚げされています。

今回、どんこを使った料理をいただくのは、宮古駅から徒歩5分ほどの『浜ゆう』。

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三陸ならではの魚介類を中心に、おいしい料理が食べられると地元で信頼の厚い割烹で、特に宴会シーズンは予約必須の人気店です。

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お店の前には、ほら、どどーんとのぼりが立ってますよ、ではいざ、どんこ料理を!

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宮古市出身の宮古市役所職員の方々にうかがったところ、「どんこは冬の味。見た目はちょっとアレだけど、あっさりしておいしい。うちで普通に食べる日常食」という存在だと教えて下さいました。

 「でも最近は、どんこも値上がり傾向にあってね、段々ご馳走扱いになってきましたよ」というのは、『浜ゆう』店主の澤田武門さん。

「今日、用意したのは、どんことしては珍しい『釣り』もの。サイズも質も最高ランクです。一般的にどんこは定置網漁で獲りますが、腹の皮が剥けたりすることも。この美しさは、『釣り』ならではですね」。

 店主の澤田さんは、旧川井村のご出身。現在の宮古市の山間部にあたるエリアです。関東での修業を経て、34年前にこの場所で奥さまと店を開かれたそうです。

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どんこは身もおいしいけれど、とにかく肝が大切と澤田さん。小振りなどんこでは肝も小さいので、ある程度のサイズは必須だそうです。まずは、その肝と身を軽く叩いて和えた、「どんこの肝たたき」をいただきましょう。うっすらピンク色をしたそれは、あっさりしたうま味が満載。脂がのった肝とはいえ、くどさはなくとても上品。ああ、日本酒が進みそうです…。

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お次は、「どんこの唐揚げあんかけ」。クセのない白身は唐揚げにすることで、コクが加わり美味です。

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そしてメインは鍋! 筒切りにしたどんこと肝に、ネギや水菜などの野菜をたっぷり加えます。注がれるのは、どんこのアラとかつお節で取った出汁。市役所の方々にうかがったり、本で調べたりすると、どんこ鍋は味噌で味つけするのが多い様子でしたが、『浜ゆう』の鍋は塩味です。

「おすましタイプも味噌味も、どちらもあり、囚われる必要はないですよ。鍋で大切なのは、味つけ以前にまず、出汁。どんこのアラから取った出汁にはコクがあって、本当にうまいです。どんこそのものの良さがわかるのは、おすましタイプかなと私は思いますけどね。」と澤田さん。

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鍋を早速火にかけていただくと、ぷっくりとどんこの身が膨らんできて、出汁に黄金色の脂が浮かんできます。なんて、いい匂い! 

「どんこは煮すぎない方がいいですよ」と澤田さんに促され、いただきます。コクのある汁、サラサラと舌の上を流れ落ちる脂が、とにかくうまい。弾力ある身には肝心要の肝を添えて食べ、うま味をすった野菜とのエンドレスループが続きます。唯一難点があるとすれば、骨が太く強いこと。でもこの骨あればこそのうま味ですから、文句は言っちゃいけませんね。

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家庭料理としても頻繁に登場するどんこ。ある方のおうちでは、水炊きで食べるのが定番だそう。みなに愛される魚だからこそ、たくさんの食べ方があるのでしょうね。

お金をかければ、大都市にもこの魚を運べるかもしれません。でもそんな「地元ならでは食べ方」の話を聞けるのは、やっぱり漁港の町ならでは。おいしさと満腹感に加え、「あぁこの町に来て楽しかったな」と思える話が聞ける。どんこ料理を目指してここへ来て欲しいのは、そんなワケです。

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「日本料理 浜ゆう」
岩手県宮古市大通1-4-23
TEL:0193-62-8264
営業時間:17:00~22:00
定休日:日曜休

どんこの肝たたき 800円
どんこの唐揚げあんかけ 750円 

取材・文・写真/木原美芽